「精神医学」における主要な精神疾患である発達障害の内、注意欠如・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)について解説します。
目次
不注意・多動・衝動性という3つの特徴が、同年誰言いの子供と比べて顕著に表れる疾患である。
脳の前頭葉の発達不全が発現の主要因と考えられているが、決定的ではない。
落ち着いて座っていることが困難だったり、手足をそわそわ動かしたり、衝動的に大声をあげたりするなど、社会生活で支障が生じている場合に診断される。
正式には、面接や各種心理検査、医学的・神経学的検査を用いる。
※DSM-5では、発症は12歳以前とされている。
DSM-Ⅳまでは、注意欠陥および破壊的行動障害という名称で行動障害のカテゴリーの中にあったのだが、DSM-5より、注意欠如・多動性障害(ADHD)となり神経発達障害に分類されるという変更があった。
以前の発症年齢は、7歳以前とされていたが、12歳まで引き上げられた。
具体的な症状の一例を以下に挙げる。
・不注意
→授業中など落ち着いていられず、席を立って歩きまわってしまう。すぐに気が散る。集中力が続けない。
・多動
→じっとしていることが苦手。座ってなければいけない場面でも歩き回ってしまう。
・衝動性
→思いついた行動を考えるより先にしてしまう。
薬物療法は、重大な症状があらわれている場合に検討する場合がほとんどである。
第一選択薬は、メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)である。他にも、アトモキセチン(ストラテラ)や抗うつ剤なども有効である。
心理療法も欠かすことはできない。
特に行動面の変容のためには、子供の望ましい行動をほめるといったオペラント条件づけに基づく行動療法が有効である。
また、SST(ソーシャルスキルトレーニング)なども有用とされている。
親への心理教育や、学校へのコンサルテーションなど、症状の説明を丁寧に行うことは重要である。
また、親と学校の連携がスムーズにいくように調整したり、児童相談所との連携を促したりする場合もある。
注意欠如・多動性障害の子供は、周囲に対して挑発的で反抗的な行動を当然のごとく取ってしまうという性質がある。この場合、反抗挑戦性障害を併発している場合が多く、エスカレートすると、万引きや暴力を行う行為障害に発展する恐れもある。
そのため、反抗挑戦性障害が併存しているかの早期発見・アセスメントが重要である。
DSM-5より正式に発達障害に含められた注意欠如・多動性障害は、発症発現年齢の変更がありました。
中核症状である、不注意・多動・衝動性については具体的な特徴をイメージしながら覚えることをおすすめします。
また、援助方法についても薬物療法と心理療法、更には連携を含めて丁寧に理解しておくことポイントです。