「精神医学」における主要な精神疾患である発達障害の内、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)について解説する。
目次
社会的コミュニケーションや対人的相互作用の困難さ、行動や趣味などの極度の限定などの広汎にわたっての発達上の障害であり、神経発達障害の中に分類されている。
(アンバランスな能力発達が特徴的に認められる。)
発症率は約1%であり、年齢や環境との相互作用を通して多彩に表れるといった性質を持つ。
※自閉症の3つ組の障害とは、「社会性」「コミュニケーション」「想像力」の障害のことを指す。
DSM-Ⅳの定義では、広汎性発達障害と呼ばれていたが、DSM-5から自閉症スペクトラム障害(ASD)と変更された。
DSM-Ⅲ以降、自閉症はウィングの考えに基づく3つ組の障害(社会性の障害,コミュニケーションの障害,想像力とそれに基づく行動の障害)の各領域の症状の有無によって判定されてきた。しかし、DSM-5では、①社会性および対人コミュニケーションの障害と、②趣味関心の限定と反復行動の2つの領域にまとめられた。
DSM-5における、もう1つの変更点はレット障害の除外である。
DSM-Ⅳの診断カテゴリーでは大きく、アスペルガー障害、自閉性障害、レット障害、小児期崩壊性障害、非定型自閉症と分類されていた。
このうちレット障害はMethyl-CpG-binding protein2遺伝子が原因遺伝子であることが発見されたため、DSM-5の独立した診断名から除外される運びとなった。
従って、DSM-5における自閉症スペクトラム障害の下位診断項目は、アスペルガー障害、自閉性障害、小児期崩壊性障害、非定型自閉症である。
DSM-5では、自閉症スペクトラム障害の重症度を、軽度(支援を要する)、中等度(多くの支援を要する)、重度(強力な支援を要する)に分類している。
スペクトラムとは連続体のことでつながりを表す言葉である。
これまでの考え方では、PDDとその他は隔離されていた。
いわゆる自閉症の症状は重さが異なるが、重症者と軽症者まで境界線は引かず連続していると考える。そしてこれらは連続的につながっていき、最終的には一般の変わり者レベルの人までつながっていくと考える。
DSM-5では、このように自閉症を連続体として考えている。
以下に具体的な症状の一例を挙げる。
① 社会性とコミュニケーションの障害
・乳幼児期
→同じ言葉の繰り返しが普通より著しい。言語発達の遅れがある。微笑み返しがない。他人への興味がない。
・学童期から青年期
→授業への参加が困難。人付き合いが困難。言葉が不自然。
② 興味関心の限定と反復行動
・乳幼児期
→細かな配置の違いなどに敏感で、パニックを起こすこともある。
・学童期から青年期
→自分の中のルールを厳密に遵守することに強いこだわりをもつ。熱中するものに著しい偏りがあり、中断されるのを必要以上に嫌がる。
上記以外にも、極端な感覚過敏や、感覚鈍麻を示すことがあり、突然の大きな音に混乱し、パニック状態に陥ることもある。
行動療法的アプローチを基本とした療育や、二次的問題に対しての家族への心理教育や学校へのコンサルテーションを行っていくことが援助の基本である。
また、自閉症児を支援するための個別教育のプログラムであるTEACCHが広く利用されている。
自閉症スペクトラム障害は、以前の広汎性発達障害から大きな概念の変更がありました。
この変更点を抑えつつ、内容をしっかりと理解しておくことをおすすめします。
スペクトラムという考え方を理解しておくことも重要です。
また、具体的な症状や特徴をイメージしておくと理解が広がり知識が深まると思うのでもう一度確認してみてください。