「臨床心理学」の心理アセスメントにおける主要な投影描画法のパーソナリティ検査であるバウム・テスト(Baum test)の解説をします。
コッホが開発した投影描画法のパーソナリティ検査。
A4の用紙に「1本の実のなる木」を描いてもらい、描き終わった絵について気になる点を質問し、被験者に自由連想法を行いながら答えてもらう。
樹木画テストともいう。
(バウムはドイツ語で樹木を意味している。)
描かれた絵に、被験者の自己像が投影されているという前提の中で解釈していく検査である。
もともとは、職業適性の補助手段として用いられていたが、後にパーソナリティ診断や発達的側面の検討に使用されるようになった。
※制限時間はない。
紙の使い方や消しゴムの利用の制限、時間に対する制限もなく自由に「1本の実のなる木」を描いてもらう。
被験者が描いた1本の木から、「全体的印象」「樹木の位置」「樹木の形態」「鉛筆の動き」という4側面から判断し、パーソナリティ(とりわけ内面の気持ちや言語化されない深層心理)を知るために使われる。4側面の詳細を以下に示す。
【樹木画の分析】
・形態分析
→全体的な絵の印象とバランスおよび、根・幹・樹幹・枝葉という4つの部分に関する分析を行うこと。
・動態分析
→鉛筆の使い方や質圧を分析すること。
・空間分析
→紙面の上下前後左右といった空間の使い方を分析すること。
・全体的な印象
→樹木の全体的な特徴や印象を把握すること。この際には、空間象徴理論の考え方を取り入れ、木の位置や場所、大きさ、幹や葉や地面、木以外の要素から把握していく。
幹 | 自我状態や情緒の状態 |
樹幹 | 知性や思考の働き |
根 | 無意識の欲求や衝動 |
枝 | 情緒や知性の発達度、他者との関わり |
葉 | 承認欲求、自己表現、他人との関わり |
実 | 成果や実績 |
地面 | 親密な人との関係 |
グリュンワルドによる空間的象徴理論、筆跡学的側面、発達的側面も考慮して解釈を行う。
【空間象徴理論】
上が意識、下が無意識、左が母・過去・内向性、右が父・未来・外向性
受動性への領域 (生への傍観) |
能動性への領域 (生への対決) |
発端、対抗、遅滞 (幼児期への固着) |
衝動、本能 (葛藤) |
・施行が簡単で、様々な年齢層や言語氷室が困難な対象にも適用できる。
・一般的なパーソナリティ検査としてだけでなく、発達の指標を測定する際や、精神疾患のスクリーニング検査としても利用できる。
・心理療法の効果測定にも用いられる。
・樹木を描くこと自体が治療効果としての役目を果たす場合もある。
バウム・テストだけで被験者のパーソナリティのすべてを理解することは出来ない。
そのため、補助的なテストとしての位置付けを忘れず、テストバッテリーの1つとして用いることが大切である。
投影描画法のパーソナリティ検査として有名な心理検査です。
概要や特徴、分析方法などを大まかに理解しておいてください。
樹木画の分析方法の重要点を抑えておくことをおすすめします。
アセスメントの総論的な理解も大切ですので、以下の内容もチェックしてみてください。