人間の性格って何だろう?こんな疑問に一度くらいはぶち当たったことありますよね?
今回の記事では、科学的に最も正しいといわれている性格理論であるビッグファイブ(主要5因子)を紹介します。
心理学では、性格の上手な活かし方や、目標を達成するために必要な性格の表面的な変え方など、おもしろい研究が沢山おこなわれているのですが、ほとんどすべてがこのビッグファイブを使って進められています。
つまり、科学では性格=ビッグファイブということです。
何かを成し遂げたい場合や幸せになる方法を考えるとき、あるいは、コンプレックスに悩まされた時、一番大切なことは自分を知るということです。
本当の自分を知ることで、弱みと思っていることを強みにも出来れば、自分なりの成長の道しるべを探すこともできます。
是非科学的に最も正しいといわれている、人格理論で自分を知ってください。
ちなみに人格心理学では、これまで様々な人格理論の研究がなされてきました。人格心理学の全体的な研究の流れや別の人格理論も勉強してみたいという方はこちらをご覧ください。
目次
ビッグファイブとはゴールドバーグという心理学者が開発した性格特性理論です。パーソナリティを扱う科学の中で最も影響力のある性格理論です。
ビッグファイブができるまでの背景を少しだけ紹介します。
心理学者は人格研究の歴史の中で、辞書から性格として当てはめることができる単語を数多く抽出していきました。しかし、膨大すぎる単語の多さから現実的な人間理解のために実用性に欠けるという判断をしました。そこで、因子分析という統計手法により類似した単語をまとめて、その膨大な数の単語を減らしていきました。そして、実用的に使える単語数まで減らした性格検査がいくつも開発されました。その中で、現在最も科学的に信憑性があるされているのが今回紹介するビッグファイブということになります。
では、具体的にビッグファイブとは何なのかを見ていきましょう!
・誠実性
・外向性
・神経症的傾向
・開放性
・協調性
この5つがビッグファイブです。
ビッグファイブを理解するうえで重要なことは、これらの要素を連続的なものとして考えるということです。つまり、どれかに当てはめていくのではなく、どの要素にも当てはまるという考え方の中で、どの程度その性質があるのかということを量的に測定するということです。
従って本物の検査では、これらの性質を数値でそれぞれ算出します。
また、これらは、半分が遺伝で決まっていることが分かっています。そして、目標達成能力や健康、幸福感などと関連することも分かっています。
では早速ですが、それぞれどんな特徴をもつのか紹介していきます。
誠実性とは一言で言ってしまうとまじめさのことです。
・誠実性が高い人の特徴
「計画的に行動する」「非衝動的」「賢明」「我慢強い」など
・誠実性が低い人の特徴
「無計画」「衝動的」「不注意」「軽率」など
誠実性は勉強や部活、仕事の成績に大きく関連します。
誠実性が高い人は、自分が達成させたい目標のために必要なやるべきことを一生懸命に取り組みます。
反対に誠実性が低いと、何か達成させたい夢や目標があってもコツコツ取り組めず、衝動的に別のことに走ったり、自分が本当に欲しいものとは別の手近な利益や快楽に流されるといった特徴があります。
更に誠実性は健康とも関連しています。当たり前かもしれませんが誠実性が高い人は、健康に良い生活を持続的に保つ習慣が身についているし、自制心がしっかりと効くという特徴も持っているそうです。
しかし、何事も2面性があるように、誠実性にもマイナス面があります。
それは、「面白みのなさ」が目立ってしまう可能性があることです。誠実性が高い人は秩序正しく自分の規律を重んじるために時に柔軟性を失います。
そのことで、他者から「おもしろみにかける」という評価を受けてしまう場合もあります。
例えば、誠実性は、一世代で富を築いたお金持ちの人がもってる性格特性ということで有名です。
というのも、普通の人、あるいは貧乏な人がお金持ちになのためには時間が必要です。つまり長期的な課題であるということです。今持っているわずかなリソースを手近にアクセスできる目先の利益や快楽のために使うのではなく、将来もっと大きくなって帰ってくるように投資をすることが大切ですよね。
つまり、現状では不可能な量の利益のために時間と労力を未来のために投資する必要があるのです。
しかもこのとき、先ほどのトマトの例でいえば、正しい方法で時間をかけて育てないと実はなりません。更に言うと、毎日水をあげていても実が成らない時もあります。
試行錯誤を繰り返しながら、今を我慢し、将来のために継続した努力をすることが大切となります。
従って、お金持ちは誠実性が高いということになるのでしょう。
お金に限らず、すぐには達成できない長期的な大きな目標を達成しやすい人は「誠実性」が高いという特性があります。
長期的な夢をかなえる場合「誠実性」は必須です。
とはいえ、性格は遺伝で半分決まっているので、本質的に変えるのは難しいです。現実的に誠実性がもともと高くない人は、すべてのことにまじめに取り組んだら疲れてしまいます。
ですので、選球眼が大切です。自分が本当に求めている対象に関わるときにのみ「誠実性」を意識するということが大切になるでしょう。
これは、読んで字のごとく外に向かう性格のことです。つまり、外向性というのは心のエネルギーや注意が外に向かっていることを指し、内向性は内に向かっていることを表します。
・外向的な人の特徴
「積極的」「目立ちたがり」「対人関係に喜びを感じる」「堂々としている」など
・内向的な人の特徴
「引っ込み思案」「めそめそしているように見える」「消極的」「ひとりか少人数でいることを好む」など
外向性という性格特性は、パーソナリティを扱う科学において特に注目度が高い研究テーマとなっています。
脳科学では、外向的な人と内向的な人の生理的な違いを、脳の新皮質の特定領域における覚醒レベルの違いであると報告しています。人間には、日常生活で適切にふるまうには、覚醒レベルを最適に保つ必要があるという性質があります。
そこで、外向的な人は通常時の覚醒レベルが低いため、自分の外にあるものや人に対して刺激を求め覚醒レベルを上げる必要があります。
一方、内向的な人は通常時の覚醒レベルが高いため、極力外からの刺激を避け覚醒レベルを必要以上に上げないようにしているのです。内向的な人が人前を好まない理由には、人前という刺激が多い状況では最適な覚醒レベルを大きく超えてしまうという神経科学的な理由があるのです。
つまり、外向性というのは、外からの刺激に対する感度に強いと言い換えることができるのです。
コミュニケーションの取り方も一目瞭然で、外向的な人は積極的、内向的な人は消極的です。このことにより、自然と外向的な人は友達が多くなります。
外向性-内向性を測定するときも他の要素と同様、どちらかのグループに分けるのではなく、連続的な指標で考えるのがビッグファイブです。
つまり、外向型の数値が極端に高い人もいれば、極端に低い人もいます。そして、外向と内向の中間に位置する人もいます。
この中間型を両向人間と呼びますが、普段から覚醒レベルが最適なあるいみ便利な特性を持ちます。両向型については、実際の社会とのかかわりの中でどのような特徴がみられるのか、これから研究が進んでいくでしょう。
ここまでは外向型の良い面を紹介してきました。一般的な社会で良いといわれているのは外向型の特徴でしょう。
しかし、内向型にも良さがあります。まず一つ例をあげると、中学から大学までの成績が内向型の人のほうが良いという研究です。これは、内向型と外向型の知的能力の違いではなく、環境的なものです。今の学校教育のシステムですと、多くの場合、刺激的な華やかな状況下でのテストではなく、机に向かって一人でこなすという状況で行われるテストによって成績がつけられることがこの結果を裏付けています。
また、内向型は物事の「質」を求めます。つまり、時間をかけて精度の高い物事を達成させる能力を秘めているのです。外向型は物事の「量」を求めます。つまり、要領よくこなせるという良さもありますが、正確さや精度に欠けるという欠点もあります。
また、内向-外向というのは性格特性の一部です。そのほかの性格特性が重なり合って人間は生きていますので、内向-外向だけで簡単に性格の優劣はつけられません。
どちらとも社会に必要な能力なのですから、内向性が社会に必要とされ活躍できる場所があるのです。
神経症的傾向とは簡単に言ってしまうとメンタルの弱さのことです。
対義語として的確な言葉を選ぶとすれば精神安定性となるでしょう。
つまり、
・神経症的傾向が高い=メンタルが弱い
・神経症的傾向が低い=メンタルが強い
ということになります。
・神経症的傾向が高い人の特徴
「不安を感じやすい」「小心者」「くよくよしているように見える」「自信がない」など
・神経症的傾向が低い人の特徴
「自信がある」「打たれ強い」「負けん気がある」など
神経症的傾向と幸福感の関係式は極めて単純です。
それは、神経症的傾向が低い人(情緒が安定している人)は幸福度が高いというものです。
考えてみると当たり前かもしれませんが、複雑すぎる社会の中では自分に批判的な人がいるのは当たり前ですし、何か行動しようと思った時、応援の声ばかりではありません。
そんなとき、他者からの好ましくない反応もいい意味で受け流す強さが、効率よく物事に取り組む助けとなります。
何かの障壁や課題にぶつかった時、メンタルが強い性格を持っていたほうがスムーズに自己解決できます。そして、今の社会では何にもぶつからずに生きていくことはほぼ不可能です。
従って、神経症的傾向の低い人が、この世界を勝ち抜くために有利ということが言えるかもしれません。
こう説明すると、神経症的傾向の高い人は幸福になるためにとても不利なように見えてしまいますよね?
しかし、神経症的傾向が高い個体も人類に必要だったから今も生き延びているのです。
人間の脳には扁桃体と呼ばれる、ネガティブな情動(不安や恐怖)を司る部位があります。この扁桃体と神経症的傾向は関係しているといわれています。
私たちの祖先は、弱肉強食の世界で、危険な相手を適切に察知し身を守りながら生き延びてきました。つまり、本当に危険なものを見極めるためにいつも気を利かせてなければ、たやすく強い動物に襲われたり、毒のある実を食べて死んでいったでしょう。
心配症であることは生きていくために、ものすごく大切なことだったのです。
現代でも、チャレンジすることが重要な一方で、現実的に自分の不利益になるようなマイナスなことや危険がたくさん存在しています。そんなとき、怖い、不安と思うことは身を守るために必要な能力です。
もし、メンタルが弱いことをコンプレックスだと感じている方がいましたら、それは自分が持っているとても大切な能力だと思ってください。強みだと本気で思うことが出来たら、その武器をどう使うかが見え始めてきますので!
開放性とは、新しい知識や経験、人間関係に対する好奇心のようなものです。
開放性=好奇心と考えていいでしょう。
・開放性が高い人の特徴
「クリエイティブなアイディアを思いつきやすい」「常に新しい物事をポジティブに受け取りやすい」「いろんなことに興味を持って時間をかけてのめりこみやすい」など
・開放性が低い人の特徴
「現状で十分に満足だと思う」「生活の変化を好まない」「安定を得たい」など
開放性が高いという性格の持ち主は、冒険が大好きで新しい発見や経験を好みます。
知識や芸術、スポーツなどにとても楽しく取り組むことができ、その中から喜びや成長を見つけ出します。
そして、知恵を振り絞って、クリエイティブなアイディアを次々と出していきます。ビジネスを作る経営者や、新しい仕組みや商品を作る発明家、物事の本質や新しい理論を追求する研究者は開放性が高いという研究もあるくらいです。
開放性が高いと、喜びや楽しさを多く経験します。
しかし、実は、抑うつや悲しみ、他人に対する敵意などのネガティブな感情も多く感じるという研究もあるようです。
冒険をするということは、楽しいことを発見する喜びを得る代償として、嫌なことを経験するというリスクを伴います。自分がイメージした成功や喜びにたどり着けずに、それとは真逆の、失敗や悲しみを受け入れなければいけない時もあります。
開放性が低い場合、大きな喜びもない場合、失敗や悲しみも最小限に抑えることができます。変化することを嫌い、安定を求めていたほうが傷つかずに済む場合も多くありますよね?
変化することで成長する!コンフォートゾーンを抜け出すことが成功する秘訣!間違ってはいません。しかし、変化しないことを選んで生き延びた個体もいるのです。
もちろん、どちらが良いとか悪いという議論をするつもりはありません。(そのような議論をすること自体ナンセンスですし、しても意味がないのですが)
どちらの人間もいますし、同じ個人であってもジャンルによって開放性の量が変わることも多々あります。
協調性とは、他者とネットワークを組み協力できる、あるいは他者の立場を尊重できる性格特性のことです。
一般的に社会的に望ましいといわれているような性格で、いわゆる「いい人」のことを指すでしょう。
・協調性が高い人の特徴
「協力的」「友好的」「思いやりがある」「感じが良い」「同情的」など
・協調性が低い人の特徴
「個性的」「独自的」「日友好的」「非協力的」「個人主義的」など
他者とチームを組んで何かを達成させたいときや集団の規範に従いながら物事を遂行するときなど、協調性の高さが必要です。
多くの組織は、集団での利益を追求するため、一般的に協調性の高さは社会的に望ましいとされている性格特性です。
他の動物のように、身体能力が高くない人間にとっては、群れを作って自分たちの命を守ってきました。その時に、全体の利益のために役に立ったり、協力する必要があります。今の社会でも同じですね。
チームを組んで課題や仕事に取り組む時は、協調性を必要とします。
人間は社会的な動物ですので、本能的にも第一印象の評価基準として「協調性」が重要となると考えられています。
当たり前ですが、協調性が高い人=「いい人」と思われます。
なぜなら自分だけでなく、自分を含めた集団の利益のために行動ができる人と判断されるからです。
そして、協調性が高い人は対人関係からの喜びが得られやすく、健康や幸福感とも関連が高いと報告されています。本質的に人間は協力プレーを好むように作られているのでしょうね。
ここまでで示したように、協調性は一般的にとても望ましいとされる性格です。
しかし、協調性が低いと悩んでいる方にはかなりの朗報ですが、今の科学では、協調性の高さは、いわゆる成功と最も関連が低い要素であることが分かっています。
これはやはり、みんなと同じではその先に抜け出せないということが関連しているそうです。
つまり、集団を抜け出した先の自分の利益を追求することなど、人が良すぎてできないといったところでしょうか。
協調性の反対語として、独自性という言葉がありますが、普通の人が経験しないような成功を手に入れた人には、周りに合わせたり協力することを必要としないような、独自性があったのでしょう。
成功している企業の社長や、研究者の中には、協調性が低い人が多いそうです。人間関係よりも、自分の成長や成功に喜びを強く感じるのでしょう。
従って、協調性が低いと感じている人は、他人と違うような、大きな成功を手に入れるチャンスかもしれませんね。
(しかし、もちろん他の要素や性格とは別の能力も混合しての成功ですのでこれだけで一概には言えませんが。)
ここまで、ビッグファイブのそれぞれの特徴を解説してきました。
ここまで見ていただいた方は分かっていただけたと思いますが、どの性格特性にも良い特徴と悪い特徴があるということです。従って、性格に良い悪いはないということになります。
どんな性格も、広い視点で見たとき、人類全体に必要な性格なのです。
つまり、自分の性格にコンプレックスを感じている方でも、状況や文脈によってはプラスになりうることも十分にあるということです。
繰り返しになりますが、良い悪いではなく使い方次第ですので、性格を能力としてとらえ自分が活躍できる場を大切にしていってください。