近年の「臨床心理学」や「カウンセリング心理学」「心理療法」において非常に重要な考え方のひとつである折衷的カウンセリング(Compromise Counseling)について解説いたします。
目次
特定のカウンセリング理論や技法にとらわれずに、目の前にいるクライエントのために複数の理論や技法を駆使して、最善の方法でクライエントに接していこうという考え方のアプローチ法のこと。
総合主義カウンセリング、選択主義カウンセリングともいう。
1930年代には、精神分析と行動療法の比較をした論文が発表されており、1980年代に入ると統合の動きはより活発になっていった。
オールセンは、支持的技術によって診断を、非支持的技術によって感情への反応を目指した。
最近では、イーガンによって提唱されたイーガン・アプローチが注目されている。
【イーガン・アプローチとは?】
問題を正確に捉え、問題を起こしている状況を明確にして、問題を起こす機会を減らそうというもの。
イーガン・アプローチでは、対人関係の態度と、コミュニケーション技術を統合し、目標を定めることで、影響力や行動を強調する。
・ステップ1:現在のシナリオ
→クライエント自身が目標設定と現実行動に展望を持ちながら、問題状況の理解をすることを援助する。
・ステップ2:好ましいシナリオの開発
→新しいシナリオを作成したり、評価することによって、選択と決意を助長する。
・ステップ3:クライエントの実行を支援する
→クライエントが計画を立て、実行できるように支援する。
これらを含めて、発展的折衷的カウンセリング、系統的折衷的カウンセリングと呼ぶ。
症状・問題やクライエントの特徴に応じた最適の技法を選択すること。
理論を統合することを強調すること。折衷的カウンセリングの治療者は、他の理論にオープンであることが普通だが、必ずしも特定の理論的立場に依拠しないわけではない。
それぞれ、特定の理論的立場をもちつつ、総合的にオープンな試行を持つ場合が多い。
異なる学派の治療理論や本質を明らかにして共通の効果要因を適用しようとすること。
1つの学派を中心としつつ、他の学派の技法や態度を積極的に取り入れること。
心理療法の理論や展開、技法などはこれまでに多く開発されてきました。例えば、精神分析と認知行動療法では考え方の基本や背景理論は異なります。
これらと同じように、多くの心理療法はアプローチの仕方の大枠が異なるといえます。
つまり、メリットもあればデメリットもあるということです。そんな中で、目の前にいるクライエントのために、あらゆる技術を組み合わせることで心理療法を進めていくというスタンスを取るのが折衷的カウンセリングです。
特定のカウンセリング技法にとらわれないという姿勢を持つことによって、目の前にいるクライエントに対して、より好ましい技法を選択して心理療法が進められると考えられています。