「精神医学」における主要な概念である精神疾患の診断および統計のマニュアル(Dianostic and Statical Manual of mental disorders)について解説します。(以下DSMと呼ぶ。)
目次
アメリカ精神医学会(APA)による精神疾患の診断、統計の手続きに関するガイドラインのこと。
精神疾患のガイドラインでは世界的に最も浸透しつつある科学的な分類法である。
2013年5月にDSMの第5版である、DSM-5が発行された。これが現在(2019年時点)の最新版であり、日本語版は2014年に発表されている。
この改定は、DSM-Ⅳ(1994年)の出版から数えて19年、DSM-Ⅳ-TR(2000年)の出版から数えて13年ぶりの改定であった。
DSM-5の大きな特徴を以下に挙げ、それ以降詳細について解説する。
<DSM-5の特徴>
・症候学的記述学的診断基準
・操作的診断基準
・多元的診断(ディメンション診断)
・「障害」という呼び方の廃止
DSM-5では、症候論に基づく分類をしている。(症候論とは観察される症状によって疾患を診断すること)
つまり、症状の原因についての科学的客観的に実証できない病名や障害名を排除して、客観的なものとして記述できるもののみを分類している。
これにより、特定困難な病院論を廃して中立を貫いた診断が可能と考えられている。
DSM-5では、定められた各症状をチェックし、該当する症状が規定数以上あればその精神障害の診断を下すという規定を設けてる。これを操作的診断基準という。
このように明瞭な診断基準を設けることによりより信頼性の高い診断が可能になると考えられている。
これまでは、5つの軸(第Ⅰ軸=精神疾患、第Ⅱ軸=精神遅滞と人格障害、第Ⅲ軸=身体的状況、第Ⅳ軸=環境状況、第Ⅴ軸=全体的な適応状況)について評価を行い総合的に診断を実施するという方法である多軸診断が採用されてきた。
DSM-5では、この多軸診断が廃止され、多元的診断(ディメンション診断)が採用されている。
多元的診断とは、臨床的な尺度によって、症状の有無や重症度を評価することである。
症状にスペクトラム(連続体)を想定することで、%表示に基づきその重症度を特定する。
これまで、日本語訳をする際にdisorderを「障害」と訳してきた。
DSM-5では、「障害」という呼び方は買える規定となっており、disorderは「症」、disordersは「症群」と訳されている。
精神疾患の診断にはDSMの他に、世界保健機関(WHO)による国際疾病分類ICD(international classification of diseases)が用いられることも多い。
ICDは、精神疾患のみの診断基準ではなく、身体・精神における病気全般の分類である。その中で第5章が精神疾患の分類に充てられている。
特徴として、DSMが診断や治療のガイドラインとして詳細化しているのに対し、ICDは国際的な疫学調査での使用を想定しており、診断基準のシンプルさを重視しているという点が挙げられる。また、ICDでは病因についても触れられている。
※最新版はICD-11が刊行されている。
DSMは精神医学や臨床心理学、並びに類似領域で幅広く用いられている著名なガイドラインです。
最新版である、DSM-5の内容を覚えておくことはとても重要です。
今回は、全体的な特徴やDSM-Ⅳからの変更点について触れました。
深く学びたい方は、個別の精神疾患についてDSMがどのような定義を取っているのか、DSM-ⅣからDSM-5でどのような変更があったのか抑えておく必要があります。
当サイトでは、主要な精神疾患についての解説もしてありますので下記のリンクよりご覧ください。