「精神医学」分野における主要な精神疾患のひとつである解離性障害(dissociative disorders)について解説します。
目次
催眠療法家のジャネにより概念化された。
強いストレッサー等により、意識・記憶・自我同一性などの統合が損なわれる精神疾患のこと。(かつてヒステリーと呼ばれた症状の一部。)
※解離とは、個人を構成する要素(思考、記憶、感情)が、一部あるいはすべて失われる状態のこと。
DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル:第5版)の分類を以下にあげる。
(解離性遁走はDSM-5では下位分類から除外されている。)
・解離性健忘
・解離性同一性障害
・離人感・現実感消失障害
解離性障害のひとつ。
心的外傷後に重要な個人情報が思い出せなくなる疾患である。
生活史に関する全ての記憶を喪失する場合もあれば、ある一定の期間の記憶のみを喪失する場合もある。
しかし、多くの場合は喪失された記憶は回復する。
解離性障害のひとつ。
1人の人間の中に2つ以上の人格が持続的に存在する疾患である。(多重人格障害とも呼ばれる。)
幼少期における虐待をはじめとした、深刻な外傷体験を経験することが原因で発症すると考えられており、発症年齢は幼少期から老年期までと幅がある。(有病率は女性に多い。)
それぞれの人格は異なる思考や感情、行動を示し、人格間の交流がないというのが特徴である。
解離性障害のひとつ。
離人体験を経験したり、自分自身の身体が自分のものではなくなってしまう感覚が生じる疾患である。(現実検討能力は正常。)
自分が自分の身体から遊離して、上から傍観者のように自分自身を眺めているような特異な体験を経験することがある。
ストレスに誘引されて発症することが多く、記憶障害はみられない。
健康な人であっても疲労により、同様の体験をすることもある。
精神分析な立場からは、無意識の葛藤や内的不安が、言語化・意識化される代わりに、精神機能の障害に置き換えられたものと考えられている。
つまり、幼少期の過酷な体験や過度なストレスが主な原因ではないかと考えられている。
現在のところ、薬物療法での治療効果は期待できない。
主な治療法は、精神分析的心理療法である。
症状に合わせて薬物療法を行うこともあるが決定的ではない場合が多いため、周囲の援助を受けながら徐々に回復を待つというのが通例である。
(解離を測定する尺度で有名なものにDESがある。)
解離性障害のDSM-5の3つの分類は重要です。それぞれの症状や原因を理解しておくことをおすすめします。
DSM-5では下位概念から除外された解離性遁走についても抑えておくのがベストです。