「臨床心理学」における主要な治療技法であるフォーカシング(focusing)について解説します。
人間性心理学派のジェンドリン,E.Tの体験過程理論に基づいて開発された。
クライエントがこれまで明確に意識化できなかった主観的な感情・感覚・イメージへの気付きを促進していくことで、治療効果をもたらす技法のことである。
心理療法の成否は、クライエントの感情体験に深くかかわるが、この感情は身体感覚として体験され、これを明確化するものがフォーカシングである。
当初ジェンドリンは、統合失調症患者の臨床経験からフォーカシングを提唱したが、現在は健常者における自己啓発やストレス緩和、心身症や神経症圏のクライエントの心理療法として用いられることが多い。
フォーカシングでは、①人がその時々に感じている主観的かつ漠然とした言葉にできない感情の流れを体験過程と呼び、②体験過程における身体感覚をフェルトセンスと呼ぶ。
不適応状態にあるクライエントは、このフェルトセンスを表現することが出来ず、感情の流れが滞っている。
これに対し、リスナー(セラピスト)はフォーカサー(クライエント)の内に起こる体験過程を傾聴し、それが推進されるのを援助する。具体的には、フェルトセンスをぴったりと表現できるようなイメージや名前であるハンドルを探す。
これにより、クライエント自身がフェルトセンスに気付いて、その理解を深め、言語化できれば、滞っていた感情の流れが自己を成長させる方向へ向かっていく。
このように、フェルトセンスとハンドルが一致していく変化をフェルトシフトという。
フォーカシングでは、フェルトシフトを実感し、その体験を受容することによって効果が発揮されるとされている。
【フォーカシングのショートフォーム】
①間を置く ②フェルトセンス ③見出しを付ける
④響鳴させる ⑤問いかけ ⑥受容
カウンセリングの過程において、クライエントが刻一刻と感じている主観的かつ具体的な体験の流れのことをいう。
これは、今この瞬間に生起する感情の流れであり、未だ言語化されない前概念的なものである。しかしこの中には、豊かな意味が含まれており、クライエントの身体を通して感じることが出来るものである。
フォーカシングの提唱者であるジェンドリンは、不適応状態にある人はこの体験過程が滞っていると考えている。
専門用語が多く出てきていますが、流れをイメージして理論の全体像を理解してみてください。
人間性心理学派の治療技法として非常に有名なものですので、しっかりと抑えておくことをおすすめします。