「学習心理学」における重要な用語のひとつである洞察(insight)について解説いたします。
ゲシュタルト心理学者であるケーラー,W.によって提唱された。
問題を構成する要素間の関係と構造を全体として理解することで解決に至る学習過程のこと。
単に偶然解決に至る試行錯誤とは区別される。
※洞察は、成立した瞬間急激に解決に至るという点で、徐々に解決までの時間が短縮されていく試行錯誤学習とは大きく異なる。
ゲシュタルトとはドイツ語で「形態・形、全体」を意味する単語である。
ゲシュタルト心理学の考え方は「知覚は単なる刺激の結果によって形成されるものではなく、要素に分離・還元することができない全体的な枠組みによって生じるもの」というものである。
洞察学習の実証実験は、ケーラーによるチンパンジーを被検体として使ったものが有名である。
【内容】
部屋の隅に箱と棒を置いてあり、バナナを天井から吊り下げた部屋にチンパンジーを入れて観察する。
(チンパンジーは天井から吊り下がったバナナを取りたい。)
【結果】
チンパンジーはしばらく考えた後、箱をバナナの下に移動させ踏み台として利用し、かつ棒を持ってバナナを落とした。
⇒各要素を全体として認知(見取り図を描く)して、初めて問題解決に至ると考えることが出来る。
脳は、自動的に問題解決するアイディアを作る機能を持っているという考えの元、政治学者のウォーラスが問題解決のための4つのプロセスを提唱している。
【問題解決の4プロセス】
① 準備期:情報や知識をインプットする過程であり、問題と向き合う段階。
② あたため期:問題からいったんは馴れ放置する段階。
③ ひらめき期:無意識化の情報から関連づけや再構成を行い、アイディアが生み出される段階。
④ 検証期:アイディアを試す段階。
ゲシュタルト心理学のビッグネームであるケーラーが提唱した学習モデルです。
パッと見た感じ、試行錯誤学習と似ているような印象を受けますが別物です。
ソーンダイクが行った猫の問題箱と、ケーラーが行ったチンパンジーの実験をよく見比べてみれば、この2つの違いが分かります。
学習モデルとして非常に重要ですので、ぜひ参考にしてみてください。