「臨床心理学」における重要な治療技法のひとつである風景構成法(landscape montage technique)について解説いたします。
日本の精神科医である中井久夫(ひさお)により考案された芸術療法としての描画療法である。
A4の用紙に大景群と呼ばれる「川、山、田、道」、中景群と呼ばれる「家、木、人」、小景群と呼ばれる「花、動物、石」の合計10個を順番に描いてもらい、描いた絵について自由連想法を用いて語ってもらう心理療法。
そして、治療者とクライエントとが質疑応答をする中で、自己洞察を促すことを目的とする。
※適応年齢は6歳以上、所要時間は大体15~20分程度とされている。
(6歳以前は風景の概念が把握されづらいと考えられている。)
風景構成法はもともと、統合失調症の下位分類のスクリーニング目的で使用されてきたが、現在は独自の心理療法として、1回限りで終わるのではなく、継続的に描画表現の変化を追っていく方法を用いている。
これにより、クライエントの心的世界の統合を1番の目的としている。
のちに、心理アセスメントの投影描画法検査としても用いられるようになった。
絵をかいてもらう前に、治療者は描画者の目の前で、マジックペンを使い縁取りを行う。これを枠づけ法と呼ぶ。
枠づけ法をする意味は、①描画者の表現を保護することと、②表現を強いることの2つである。つまり枠付けには、守ることと動機付けをすることの二重の性質が生じていることになる。
枠づけを行った後で、クライエントにサインペンを渡し「どのような絵が完成してもよい」ということを伝える。
教示が終了したら以下の手順で描画を始めてもらう。
手順 | 分類 | アイテム |
第1段階 | 大景群 | 「川」→「山」→「田」→「道」 |
第2段階 | 中景群 | 「家」→「木」→「人」 |
第3段階 | 小景群 | 「花」→「動物」→「石」→「自らが描きたしたいと思うもの」 |
これらが描き終わったら、「以上で良いか?」を訪ね、よければ色を付けてもらい完成である。
完了後にクライエントに、季節や天候、川の流れの方向、人の行動などを質問する。
アセスメントとしての風景構成法は、投影法の中でも描画者の自由度が高く、検査者による評定の客観性が低い。そのため、解釈の標準化がなされていない。
解釈の留意点として以下の3つがある。
① 箱庭の解釈が参考になるが、次元の違いがある。(箱庭は3次元であり、風景構成法は2次元である。
② 解釈の方法論として、中井は空間構成の諸形式を提示している。
③ バウム・テストなどに良く援用される空間図式の適用は必ずしも適当ではない。
空間構成の諸形式とは、空間の構成の仕方によって、疾患特異性を見定めようとする方法である。例えば、「統合失調症の妄想型には、複数の異質の空間がキメラ的に統合されて描かれている」などさまざまな疾患者について分類がなされている。
風景構成法は、基本的には心理療法としての技法ですが、アセスメントとしても利用されることがあります。
従って、こちらの記事では歴史や方法などを段階的に紹介しました。
内容や意味、方法をぜひ抑えてみてください。