「心理学研究法/心理学測定法/統計」分野における重要な用語である、法則定立的研究と個性記述的研究(Law-oriented research/Individual descriptive research)について解説いたします。
目次
心理学研究法を、研究の目的によって分類したもの。
■法則定立的研究
→人間の心や行動に関する一般的・普遍的な法則を見つけ出すことを目的とする研究法のこと。
■個性記述的研究
→時間の経過とともに変化する特定の個人をありのまま記述していくことを目的とする研究法のこと。
それぞれの研究法の利点と欠点を以下に挙げる。
・法則定立的研究
利点:客観的で実証的データを基に分析をするため科学的に人間の法則を見つけることに適している。一般的な心理学では研究の中心であり、主に実験や調査を用いる。
欠点:法則が適応されずらい特別な対象の研究には向かない。
・個性記述的研究
利点:特殊な対象や、同一個人の時間的流れによる変化を検討できる。一般法則がすべての人にあてはまるとは限らないという批判から、特に発達心理学や臨床心理学の分野で用いられていることが多い。
欠点:一般化や個人間の比較が困難。
例えば、代表的な個性記述的研究である事例研究でえられる地検は、個人のクライエントの変化を検討するため一般化することは難しい。
言い換えると、一般法則ではとらえきれないクライエントの細かい変化や主観的体験を総合的に理解したいときには有効な研究法である。
個性記述的研究の代表的なものに単一事例研究がある。
これは、1人の人間を被験者として行う実験デザインであり、臨床や教育など、多くの被験者を集めにくい領域での研究や、個人内の変化に着目する研究で広く用いられる研究法である。
【実験デザイン】
・ABデザイン
→何の処遇も与えないベースライン期(A)の後に、何らかの処遇を与える処遇期(B)を設定し、その処遇の効果を確認する。
・ABAデザイン
→処遇期の後に、再び処遇を取り除き、効果の消失を確認する撤回期を加える。
・ABABデザイン
→更に効果の消失後(撤回期の後)に、再処遇を与え、処遇の効果を再確認する再処遇期を加える。
法則定立的研究と個性記述的研究の違いを理解するためには、まずは研究目的の違いを明確にしておくことがポイントです。
それぞれにメリットとデメリットがあり、相補的な部分も多いのでセットで覚えておくことをおすすめします。