「心理学研究法/心理学測定法/統計」における重要な用語のひとつである縦断研究と横断研究(longitudinal/cross sectional study)について解説いたします。
縦断的研究と横断的研究は心理学においては主に発達研究の際に用いられる2つの主要な研究法である。
■縦断的研究(縦断研究)
→同一被験者(群)を長期にわたって継続的に観察・測定することによって、変化や発達の原因を探る研究法のこと。
■横断的研究(横断研究)
→異なる年齢集団に属する被験者(群)を観察・測定することにより発達的変化を検討する研究法のこと。
ある変数の時間経過に伴う変化を、同一の調査対象集団から継続的にデータを得ることによってとらえるもので、個人の発達的変化を追い続けるという点で、発達研究として最もシンプルであり理想的なものである。
ex)2000年の時に10歳だった被験者群の100m走のタイムと、同一対象者が20歳になった時(2010年時点)の100m走のタイムを比較して変化・発達を検討する。
利点:ある変数の時間変化にともなう変化について、その詳細なプロセス並びに因果関係にせまる形で捉えることが可能である。同一被験者(群)の発達的変化をシンプルに捉えることが可能である。
欠点:時間的コストが非常に大きく、研究に膨大な期間を要する。また多くの対象者を追跡することが困難であるため、統計処理に耐えられるだけのデータを集めることが困難である。
ある変数の時間経過に伴う変化を、ある一つの時点の測定において捉えようとするものである。(同じ時期の中で異なった年齢群を調べる。)
ex)2010の時点で10歳の被験者群と20歳の被験者群の100m走のタイムを同時に比較する。
利点:一度にデータを収集できるため時間的コストが小さく、多くのデータを集めることが可能である。
欠点:個人の発達の軌跡が把握できず、同一被験者(群)の一貫性は検討できない。また、対象年齢群の環境や資質の等質性の推移が難しいことがあげられる。
同時期に生まれ育ち、共通した時代背景を経験している集団をコホートと呼ぶ。
同一年齢集団の差異を用いて、時代背景の影響を検討する研究をコホート研究という。(異なる時期の同一年齢)
ex)1990年の時に20歳だった被験者(群)の100m走のタイムと、2010年の時に20歳だった被験者(群)の100m走のタイムを比較して、時代の影響を検討する。
※縦断的研究と横断的研究ではコホートという要因を考慮できないという指摘があり、近年コホート分析と呼ばれる研究法が普及した。(教育の在り方や文化・環境的な違いから、同じ年齢によっても時代によって異なる発達的道筋をたどっている。)
利点:異なる年齢集団に対して長期的な追跡を行うことによって、各コホートに特異的な発達的道筋を分析できる。
欠点:非常に大きなコストや時間を要する。
おまけ:コホートは1940年代以降、人口統計学などの分野において発展した概念である。コホート内の継次的変化を見るコホート内分析や、コホート間の比較をするコホート間分析などの方法がある。
大きく、縦断的研究、横断的研究、コホート研究の解説をしてきました。
それぞれの概要と利点や欠点、違いなどを理解していただけたら幸いです。