「精神医学」の主要な疾患のひとつであるうつ病・双極性障害(major depressive disorder/bipolar disorder)の解説をします。
持続的な気分の変調によって困難が生じる精神疾患のこと。
DSM-5以前は、気分障害と呼ばれていた。
・気分の著しい低下→抑うつエピソード
・気分の著しい高揚→躁病エピソード
この2種類があり、発症率は女性のほうが2倍多いとされている。
うつ病:抑うつエピソードのみを経験する。
双極性障害:抑うつエピソードと躁病エピソードを反復する。
(DSM-5では、2種類を明確に区別するために「気分障害」という総称を用いていない。)
<症状>
内因性うつの生物学的指標→日内変動,季節性の変動,早朝変動
うつ病の3大主症状→罪責,心気,貧困
躁病の主症状→食欲亢進,自信過剰,多弁
<原因>
原因は現在の医学でははっきりと特定されていない。以下にいくつかの仮説を挙げる。
・脆弱性ストレスモデル
・神経損傷仮設
・モノアミン仮設
<病前性格>
・クレッチマーの循環気質
・テレンバッハのメランコリー親和型性格
・下田光造の執着気質
豆知識:仮面うつ病→身体症状は表れているが抑うつ気分は自覚していないため一見うつ病とは分からない病態のこと。
抑うつエピソードと躁病エピソードを反復する双極性障害は、気分の波の程度に応じて「双極性障害Ⅰ型」と「双極性障害Ⅱ型」に分けられる。
・双極Ⅰ型:躁状態とうつ状態を繰り返す。
・双極Ⅱ型:軽躁状態とうつ状態を繰り返す。
(Ⅰ型・Ⅱ型共に双極性障害だが、躁状態の程度が異なる。)
単にⅠ型が重くⅡ型が軽いというだけでなく、どちらに対しても異なったリスクがあると認識することが重要である。
Ⅰ型は顕著な躁状態からトラブルに巻き込まれたり、自分の将来に大きな不利益を生じさせてしまうリスクがある。
Ⅱ型はそこまで逸脱した行動は少ないが、「衝動性」が高いことが指摘されている。特に自殺企図や自殺行動がⅠ型よりも多い。
※頻度はⅡ型のほうが多く、Ⅰ型の生涯有病率が1~2%程度に対し、Ⅱ型の生涯有病率は3~8%である。
躁病エピソード→薬物による鎮静化
抑うつエピソード→休養、薬物療法、認知行動療法
薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を中心にセロトニンの神経伝達を促進する手法が用いられることが多い。
※支持的支援と家族への心理教育が特に重要で、励ましや気晴らしも初期の段階では有効ではないとされている。
精神疾患の中でも一般的に特に有名なものです。
具体的な症状や原因、治療や援助方法まで広く理解しておくことが大切です。