「認知心理学」の分野において最重要ともいえる記憶(memory)について解説します。
目次
①記銘(情報をインプットする過程)、②保持(インプットした情報を持続的に保管する過程)、③想起(保持されている情報を必要に応じてアウトプットする過程)の3つのプロセスを経る人間の情報処理や蓄積システムのこと。
記憶痕跡は、保持時間の長さにより、感覚記憶・短期記憶・長期記憶に分類される。
目や耳などの感覚受容器に与えられた情報が提示されたそのままの状態で保たれている記憶のこと。
未処理であるため容量が非常に大きく、保持時間は1秒以内と非常に短い。
感覚記憶の内、必要な情報のみに注意が向けられ、それが意味処理されることで短期記憶に移行する。
<おまけ>
感覚記憶は五感に代表されるすべての感覚に存在する。
その中でも、視覚情報に関するアイコニックメモリーと、資格情報に関するエコーイックメモリーの研究が盛んである。
感覚記憶の一部が意味処理されて、一時的に保管された記憶のこと。
保持時間は10秒~30秒である。
短期記憶は様々な情報を認知処理したり、課題を解決したりする際の一時的な記憶の保管庫として働き、役目が終わると速やかに消去される。
また、意味のまとまりのことをチャンクと呼び、短期記憶の容量は7±2チャンクである。
これは、人間が短期記憶として残しておくことが可能な情報量は、5~9個の意味のまとまりであるという意味である。
⇒これを記憶研究の第一人者であるミラーはマジカルナンバー7と呼んだ。
<おまけ>
短期記憶の保持時間は長くない。長期記憶へと移行させる場合には、短期記憶を頭の中で復唱するリハーサルと呼ばれる処理が必要となる。
理論上永続的に貯蔵される、容量無限の記憶貯蔵庫のこと。
短期記憶がリハーサルによって復唱されると長期記憶に移行する。
リハーサルの種類として、維持リハーサル(情報内容を単に復唱するだけの単純な繰り返し)と精緻化リハーサル(情報を処理し、すでにある記憶内容と深く結びつける意味処理)の2種類がある。
短期記憶から長期記憶に情報を移行させたい場合は、維持リハーサルよりも精緻化リハーサルのほうが望ましいとされている。
<長期記憶の分類>
タルヴィングは長期記憶を以下のように分類した。
宣言的記憶(顕在記憶) | エピソード記憶 |
意味記憶 | |
非宣言的記憶(潜在記憶) | 手続き記憶 |
・宣言的記憶
→言語やイメージによってその内容を記述することが出来る記憶形態。
・エピソード記憶
→時間的・個人的・空間的な経験の記憶
・意味記憶
→一般的な知識としての記憶。
・非宣言的記憶
→必ずしも言語やイメージによって記述することのできない記憶形態。
・手続き記憶
→言語化が困難な、主に動作に関する記憶。
・記銘(符号化)
・保持(貯蔵)
・想起(検索)
・感覚記憶
・短期記憶
・チャンク(7±2チャンク)
・マジカルナンバー7
・長期記憶
・リハーサル(維持リハーサル,精緻化リハーサル)
・宣言的記憶(顕在記憶)
・エピソード記憶
・意味記憶
・非宣言的記憶(潜在記憶)
・手続き記憶
記憶と一口に言っても深いですね。
まず、記憶の3過程(記銘,保持,想起)を覚えましょう。
そのうえで、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の内容とそれぞれの専門用語を覚えることをおすすめします。
特に短期記憶は、ミラーのマジカルナンバー7、長期記憶はタルヴィングの分類が重要です。
記憶は「認知心理学」で、主要な位置を占める理論なので、量は多いと思いますが確実に学習しておくべきテーマです。
※短期記憶に分類される作動記憶も「認知心理学」の重要用語です。長くなってしまうので別の記事にまとめました。