「臨床心理学」の心理アセスメントにおける、質問紙法のパーソナリティ検査であるミネソタ多面的人格目録(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)について解説します。
(ミネソタ多目的人格目録と呼ぶ場合もある。当サイトでは以降より、MMPIと呼ぶ。)
ミネソタ大学のハザウェイとマッキンレイによって開発された、質問紙法のパーソナリティを測定する心理検査。
もともとは、精神疾患のスクリーニング検査として開発された。現在では、一般向けのパーソナリティ特性をも診断できるとして、臨床場面でも多く用いられている。
スクリーニング検査とは、統計的に有意であるかを分ける検査のこと。ふるいわけ。
この場合、健常者と精神疾患者をふるいわける。
・全550の質問項目
→MMPIは、全部で550の質問項目から構成される尺度である。質問内容は、「精神的健康」「身体的健康」「職業」「教育」「社会」「性」「家族」「文化」「政治」「宗教」「精神病理」「受験態度」などである。
・10の臨床尺度
→精神病理を測定することを主な目的に10個の臨床尺度が設定されている。内容は、「心気症」「抑うつ」「ヒステリー」「精神病質的偏奇」「男性性・女性性」「パラノイア」「精神哀弱」「統合失調症」「軽躁病」「社会的内向性」である。
第1尺度:心気症(Hs) | 心気的、体調不良を訴えることによる他者操作 |
第2尺度:抑うつ(D) | 抑うつ的 |
第3尺度:ヒステリー(Hy) | 身体症状による責任回避、未熟で表面的 |
第4尺度:精神病質(Pd) | 非社会的な反抗と敵意 |
第5尺度:男性性・女性性(Mf) |
男性→女性的な態度や性格 女性→女性らしさにこだわりを見せない |
第6尺度:パラノイア(Pa) | 猜疑心が強い |
第7尺度:精神衰弱、強迫神経症(Pt) | 緊張感、不安感が強い |
第8尺度:精神分裂病(Sc) | 奇妙であり風変わり |
第9尺度:軽躁病(Ma) | 活動性が高い、躁状態 |
第10尺度:社会的内向(si) | 内向的 |
※臨床尺度は、健常群と臨床群の間で有意差が認められた質問項目で構成されている。そのため、スクリーニング検査として有効である。
・4つの妥当性尺度
・「?尺度(疑問尺度)」:どちらでもないの数。これが多い場合は、判定の中止、あるいは再検査を要する。
・「L尺度(虚偽尺度)」:回答のバイアス。これが多いと、社会的望ましさから、自分をよく見せようと回答している。
・「F尺度(受験態度)」:通常では起こりえない内容に「はい」と回答する。これが多いと、風変わりな回答や自分を悪く見せようとしている傾向を示す。
・「K尺度(修正点)」:防衛的な態度をはかるもので、臨床尺度得点の修正にも用いられる。
利点:妥当性尺度が多くあることで回答の歪みが生じにくい。
欠点:質問項目が多く、回答に多くの時間を要するため、被験者に時間的・体力的な負荷がかかってしまう。
回答は、「あてはまる」「あてはまらない」「どちらでもない(?)」の3件法である。
実施前に、「どちらでもない(?)」の回答をなるべく控えるように強調する。具体的には、10個以下になるように教示する。
MMPIの解釈は、横軸に各尺度、縦軸にT得点(粗点を平均50、標準偏差を10に換算)を表したプロフィールを作成し、それを元に解釈を行う。
・右下がりのプロフィール:神経症圏
・右上がりのプロフィール:精神病圏
・浮場プロフィール(臨床尺度瀬部手が70%以上):境界例
・山型プロフィール:L↓、F↑、K↓。援助を求める叫び。
・V字型プロフィール:L↑、F↓、K↑。防衛的になっており、自分をよく見せようとしている。
質問紙法のパーソナリティ検査として非常に有名な心理検査です。
内容とその特徴を詳細に覚えておくことがポイントです。
特に4つの妥当性尺度については確実に覚えておきましょう。