「心理学」並びに「臨床心理学」における重要な用語・考え方のひとつであるナラティブ・ベースドアプローチとエビデンス・ベースドアプローチ(Narrative-based approach and Evidence-based approach)について解説いたします。
目次
ナラティブ・ベースドアプローチは「語りに基づく手法」と訳される。
一般性や普遍性を重視するあまり、そこから逸脱するような特殊な事例の個別的理解が困難であるということへの批判から生まれた立場である。
※事例の個別性や特殊性を重視し、社会構成主義や感主観的アプローチに基づきクライエントの主観を含めた全体性を重視することに重きを置く。
多くの場合、個別性を研究する臨床心理学などの研究や介入の際に用いられる。
エビデンス・ベースドアプローチは「実証に基づく手法」と訳される。
ナラティブ・ベースドアプローチにおいて、主観的なものに重きを置きすぎると、科学的な発展が妨げられるとしてエビデンス(証拠)・客観性が重要視されるようになった。
臨床心理学の心理療法などにおいて、十分に実証されていない治療方法を適用してしまうと、クライエントの最大限の権利や利益を保証できないという考えから生まれた。
※実証的に治療効果を検討し、そこから得られたエビデンスに基づいて、適切な治療方法を選択し、個々のクライエントに適用することを重視している。
ナラティブ・ベースドとエビデンス・ベースドの両者は相反する立場であるが、この二社が相補的に働いてこそ臨床心理学派真の対人援助を社会に提供できるといえる。
繰り返しになりますが、ナラティブ・ベースドとエビデンス・ベースドは相反する立場ではありますが、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているという議論の範囲ではありません。
それぞれの特徴にあった役割があります。
これらの理解を深めるために「臨床の知」「科学の知」という言葉が非常に役立ちます。
この違いを説明した名著がこちらの臨床の知とは何かという書籍です。
中村雄二郎先生という著名な学者が書き上げた書籍でして、非常に有名ですのでぜひご覧ください。
ただ、こちらの本はやや難易度が高く完全に理解をするのが難しい本でもあります。
重要点のみ知りたいという方は、「臨床の知」と「科学の知」の違いについて簡単にまとめた記事がございますので、以下のリンクから飛んでください。