「明るい人」「まじめな人」「イケイケな人」「地味な人」「優しい人」「厳しい人」
世の中には、ここにはあげきれないほどの「人間の特徴や性質を表す言葉」が存在していますよね?
もちろん心理学でも人間の人格や性格について研究がなされてきています。
近年の研究では「遺伝」や「環境」で決まっている性格の殻を破り、性格を変えるための方法や、性格の上手な利用の仕方まで、様々な研究が行われています。このサイトでも、目標を達成するためにどうしたらいいのかという人格心理学の研究をいずれ紹介していきます。
今回はその前段階として、パーソナリティ心理学の基礎である類型論と特性論を具体的な理論をあげながら紹介していきます。
目次
パーソナリティ(parsonality)には、人格(狭義には性格)という意味があります。
パーソナリティ心理学は、人格心理学や性格心理学と呼ばれることもあります。
その名の通り、パーソナリティ心理学では人間の人格や性格の研究をしています。
人間のパーソナリティの起源は古代ギリシャ哲学やヒポクラテスの医学理論まで遡ります。これは、紀元前4世紀に有力だった「四体液説」と呼ばれる言説です。具体的には、粘液が冷淡、黒胆汁が憂鬱、血液が楽観的、黄胆汁が短期と関連しているというものです。(もちろん現在では完全に廃されています。)
パーソナリティ心理学が学問として確立したのは、そのずっと先の1930年代です。ここで、パーソナリティ心理学の背景となるような心理額全体の流れを大雑把にに紹介します。
① フロイトの、「人間は常に無意識の衝動(主に性的なもの)に突き動かされている」という考え方は、当時大きな影響を与えていました。しかし、人間のネガティブな側面を考える心理学を中心にすると生きずらくなってしまうという理由からパーソナリティ心理学ではあまり重視されなくなっていきました。
② 20世紀の中盤に差し掛かるころ、ロジャースやマズローによる人間性心理学が台頭してきました。簡単に言ってしまうと、人間が持っている可能性や、自己実現などといったポジティブな側面に焦点を当てるという考え方を基にしている領域です。
しかし、この人間性心理学も、「人間主義」であるがゆえに現実の組織や社会に完全には適合しないという限界があると指摘されてきました。
③ 今日では、セリグマンが提唱したポジティブ心理学と呼ばれる、個人や組織、社会や国家という単位で人間を幸福にしていこうとする学問が台頭してきました。人間の健康や持続的幸福を科学的にアプローチすることを軸に研究がなされています。
このように、これまでは、人格の病理などのネガティブな側面が研究の中心でした。しかし現在では、人間の可能性などのポジティブな側面に焦点をあてた研究が進められ、より広い視点から人間の人格を捉えています。
現在のパーソナリティ心理学はすべての人(特に、自分にコンプレックスがあったり、挫折してしまいそうな状況に立たされいる人)により良く生きていくための助けとなるような知恵を与えてくれます。
では、もっと根本的に心理学では人格(性格)をどのように捉えているのでしょう?
結論を先に言います。それは類型論と特性論というものです。この2つは、性格を扱う心理学の代表的な考え方です。
パーソナリティ心理学には大きく分けて2つの性格の捉え方があります。
性格を比較的少数の典型的なタイプ(カテゴリー)に分類し、それらに当てはめていくことで個人の性格を理解しようとする考え方です。簡単に言うと、この人は○○。あの人は✕✕といったように質的に素早く分類するやり方です。
●メリット(長所)
・直接的に性格を把握できる。
・全体像が把握しやすく理解しやすい。
・簡単に楽しく検査がしやすい。
●デメリット(短所)
・用意されているタイプに分類しなければならないため、当てはまらない場合にどうにもならない。(中間型・移行型・不特定型など)
・細部を無視してしまう場合が多々ある。
性格類型論の代表的な研究者であるクレッチマーは精神病患者の体系と性格の違いを分析し、性格を3つに分類しました。
体型 | 気質 | 性格 |
肥満型 | 循環気質(抑うつ気質) | おおらか・協調性・高揚と鎮静が交互に出る |
細身型 | 分裂気質 | 非社交的・繊細 |
闘士型 | 粘着気質 | こだわりが強い・几帳面 |
ユングは、4つの心の動き方に目をつけタイプ分けを行いました。4つの機能とは
●思考・・・論理的に物事を捉える
●感情・・・「好き-嫌い」「快-不快」などの感情で物事を捉える
●感覚・・・「見た通り」、「感じた通り」に、物事をあるがままに捉える
●直感・・・「思い付き」や「ひらめき」で物事を捉える
更にそれが外に向かうのか、内に向かうのかを合わせ、8つの性格タイプを考えだしました。
以下の表がまとめたものです。
向き | 機能(心の動き) | 性格 |
外向 | 思考 | 客観的事実にのっとり物事を捉える。他人に対してやや冷たい時がある。 |
感情 | 好みがはっきりしている。良くしゃべり、感情を表現するのが上手い。相手に対する共感力もよく対人関係が豊か。 | |
感覚 | 楽しさを追求し、他者と享楽を求める。 | |
直感 | アイディアが豊かで何かひらめくとすぐに行動する。多方面に可能性を追求する。地味な作業が苦手 | |
内向 | 思考 | 理屈を追求し、物事の論理や意味を深く考える。対人関係などの現実から目をそむけやすい。 |
感情 | 心の中で感情が豊か。外に表出しない分ミステリアス。仲良くなると第一印象との違いを指摘されやすい。 | |
感覚 | 自分の世界の中だけで楽しめる。対人関係よりも物質的な対象に喜びを感じる。 | |
直感 | 心など目に見えないものなどスピリチュアルなものを静かに追及することが好き。変わってるねと言われやすい。 |
この性格類型は、MBTIという心理検査で測定ができるのでぜひ測定してみてください。
しかし、人はこの種の検査で示された性格のすべてが、自分そのものを表しているかのような魔法にかけられた状態に陥りがちです。そんなことはありません。これが類型論の落とし穴でもあります。
類型論のデメリットを見ていただくとわかりますが、性格はタイプで測るのには限界があることが分かると思います。そこで登場したのが特性論です。
性格をいくつかの要素に分け、量的にその要素がどの程度備わっているかという側面から性格を理解しようという考え方です。つまりあるものに当てはまるのではなく、どのくらいその性質があるのかを尺度によって測定します。(明るさが○○%、社交性が○○%といった感覚です。)
●メリット(長所)
・タイプに当てはめることができない特徴でも測定が可能。(中間型なども分析可能)
・個人内(自分の中の要素の比率)や個人間(他者との違い)も比較可能。
●デメリット(短所)
・直感的に理解しにくい。
・視覚可能な形で全体像を表せない。
特性論を提唱したオールポートは、人間の性格特性には「個人特性」と「共通特性」の2つがあると言及しました。
(※個人特性とは、ほかの人が持たないようなその人独自の特性で、共通特性とは、程度の差はあれ多くの人が持っている特性のことです。)
オールポートは、性格の違いは類型論のように質の問題ではなく、程度の問題つまり量の問題だということを強調しました。これが特性論の考え方の基盤です。
この基盤を基に、性格を表現している単語を辞書の中から抜き出し、それぞれの特性の強弱を測定しました。
しかし、性格を表す単語はあまりにも数が多く測定するのが大変です。(オールポートは約1800語を抜き出した)
そこで、後の心理学者は因子分析という統計手法によって数を減らしていきました。
(※因子分析とは簡単に言ってしまうと仲間分け。例えば、国語・社会は文系因子、理科・数学は理系因子といった感じ。)
キャッテルは、あまりにも多いデータでは実用性に欠けるという考えを持ち因子分析により35個の表面特性(観察可能な特性)と12個の根源特性(観察が困難な特性)を抽出しました。そして12個の根源特性に質問紙で得られた4つの特性をたして16PFという性格検査を開発しました。(16個なら実用的な人間理解に役立つと考えたのです。)
アイゼンクは、更に因子分析を重ね最終的に3つの性格特性に絞りました。
①内向性、②外向性、③神経症傾向
この3つの因子を測定するMPIという性格検査を開発しました。
ビッグファイブとはゴールドバーグという心理学者が開発した性格特性理論です。現在最もパーソナリティを扱う科学の中で影響力のある性格理論です。
現在では、心理学者は一様にビッグファイブを性格としてとらえています。
ですので、特別な事情(テストなどで必要がある場合)がない方はこのビッグファイブのみ覚えておけば大丈夫です。
具体的にビッグファイブとは何なのかを見ていきましょう!
・誠実性 (まじめさ)
・協調性 (周り人や集団に協力的か)
・神経症的傾向 (精神が不安定であるか)
・開放性 (経験や知識、新しい物事に対して好奇心があるか)
・外向性 (社交的であるか)
この5つがビッグファイブです。
詳しい解説はこちらをご覧ください!
ご覧いただきありがとうございました。
週刊誌などで扱われる性格検査と呼ばれるものは、類型論のものがほとんどです。
しかも、統計を分析して開発するような科学的根拠は担保されていないものがほとんどです。
人間の性格は、典型的なパターンに単純に分けて考えることに限界があることを分かっていただけたと思います。
現在のパーソナリティ心理学、並びにパーソナリティを扱う科学では、人間の性格の要素はいくつもあり、その中間も存在するし、複数に当てはまる場合もあるという一定の結論に至っています。その特性論の中で、最も科学的に正しいとされているのがビッグファイブです。最後まで読んでいただいた方、ぜひ性格と言ったらビッグファイブと覚えておいてください。