「臨床心理学」の心理アセスメントにおける主要な投影法のパーソナリティ検査である絵画欲求不満検査(Picture-Frustration Study)について解説します。
(当サイトでは、以降よりP-Fスタディと呼ぶ。)
ローゼンツァイクによって開発された投影法のパーソナリティ検査。
フラストレーション耐性理論に基づいており、24枚の欲求不満場面が描かれたイラストに対する反応を見る。
※被験者の無意識的なアグレッションの型と方向を明らかにすることが目的である。
イラストでは、他人から害を被った場面や、自身の欲求不満が満たされない場面で何らかのフラストレーションを生じさせる場面が描かれている。被験者には、空白の吹き出しが描かれている側の人物の発言を想定し、自由に返答を書き入れてもらう。
この返答を見て、被験者の現実的な対人場面における適応性や攻撃性を分析する。
※適応範囲は、「児童用:6~15歳」「青年用:12~20歳」「成人用:15歳以上」である。
ローゼンツァイクは精神分析理論を実験を通して明らかにしようとした人物であり、P-Fスタディの元となる研究はフロイトの抑圧についての実証的研究であった。
24枚の欲求不満場面が描かれたイラストは、16枚の自我阻害場面と8枚の超自我阻害場面に大別される。
・自我阻害場面
→人為的、非人為的な障害により、直接的に自我が阻害される場面。フラストレーションの原因が他者にある。
・超自我阻害場面
→他者から道徳的な指摘や避難をされ超自我が阻害される場面。フラストレーションの原因が自分自身にある。
これらの場面から自由連想法を用いて回答する。
被験者の回答の自由度が、他の投影法に比べて低いことから、制限的投影法として分類されている。
(フラストレーションを感じさせる相手方(左の人物)を欲求阻止者、被験者(右の人物)を被欲求阻止者と呼ぶ。)
アグレッションの型は、障害優位型、自我防衛型、要求固執型に分類され、アグレッションの方向は他責、自責、無責に分類される。
これらを掛け合わせた9類型+超自我評定の2因子=合計11評定因子に分類される。
型 | ||||
障害優位型 | 自我防衛型 | 要求固執型 | ||
方向 | 他責 | E’ | E (E) | e |
自責 | I’ | I (I) | i | |
無責 | M’ | M | m |
ローゼンツァイクはあふれっしょんを攻撃性ではなく、生きていくために必要な主張性であると強調している。(フラストレーションに対する反応の総称を意味している。)
(EとIは、超自我障害場面でのみ使用される。)
GCR%(group conformity rate)は、集団一致度とも呼ばれ、集団への適応の程度を数量的に示したものである。
GCR%が低い場合、フラストレーション場面に対する世間並の適応が低いことを意味する。
【評定因子の心理学的意味】
<アグレッションの型>
・障害優位型
→欲求不満場面に対する、自我の活動反応の率直な表明を避けるタイプ。
・自我防衛型
→欲求不満場面において、ストレスを解消するための率直にして根本的な反応を取るタイプ。
・要求固執型
→解決を図るため要求に固執するタイプ。
<アグレッションの方向>
・他責
→他人から非難されたり、攻撃されたりするのを気にしがちで、防衛機制は投射を使う。相手を非難し敵意を示す。(妄想型の分裂病者に多い。)
・自責
→後悔と罪の意識を抱きやすく、防衛機制は置き換えを使う。(緊張病や強迫性障害に多い。)
・無責
→妥協の動機が強く、人から離れることで自分を守ろうとする。(転換ヒステリーに多い。)
フラストレーション耐性理論とは、フラストレーション場面に対する、反応行動を表した理論のことである。
フラストレーションが生じた時、起こす反応として以下の反応が挙げられている。
⑴ 攻撃的反応 (攻撃や破壊的衝動)
⑵ 対抗反応 (幼児的な行動)
⑶ 逃避反応 (現実逃避をする)
⑷ 抑圧反応 (欲求不満を無意識に閉じ込め過剰適応)
⑸ 固着反応 (役に立たない行動を無意識的に反復)
検査の概要や、アグレッションの型と方向の名称と分類法とその意味を抑えておきましょう。
また、自我阻害場面と超自我阻害場面の意味も覚えておくことをおすすめします。
アグレッションは攻撃性ではなく主張性のことを指します。そのあたりの細かい点も抑えておくことをおすすめします。
関連用語としてフロイトの局所論と構造論の記事のリンクを入れておきますので、自我や超自我の意味をより詳細に抑えておきたい方はぜひ参考にしてみてください。