「認知心理学」における主要な概念のひとつであるプライミング(priming)について解説いたします。
目次
先行の学習、もしくは記憶課題(プライマー)が後続の別の学習、もしくは記憶過程(ターゲット)に無意識的に影響を与えること。
簡単に言うと、先に見聞きした内容に影響されて、後に起こる行動や思考が変化することである。
このような現象を「プライミング効果」もしくは「先行刺激呈示効果」と呼ぶ。
プライミングは、直接的プライミングと間接的プライミングに分けられる。
■直接的プライミング
→先行刺激と同じものが、後続刺激として呈示される。(反復プライミング効果とも呼ばれる)
■間接的プライミング
→先行刺激そのものでなく、関連性の高い刺激を後続刺激として示す。
単語完成課題において、例えば「ステーキ」と10回言った後に「ス〇ー〇」の〇を埋めなさいと提示した場合、ステーキと回答するのが直接的プライミングである。
この場合、スポーツでも単語としては正解だが、先行してステーキと学習していたためプライミングが成立した。
例えば、連想ゲームをする際にあらかじめ果物の話をすると、黄色いものを答えなさいというと、バナナやパイナップルと答えやすくなることを指す。(黄色いものであるならば答えは何でも良いはずなのに果物の中から選んだ。)
このように、直接的にそのものではないが、性質として該当するものに先行刺激の影響を受けること間接的プライミングという。
これは、意味ネットワーク理論における活性化拡散理論で説明できる。
コリンズらによって提唱された概念。
概念に関する情報は階層構造をなし、リンクで結合したネットワークを形成している、という考え方を示す。
「上位-下位」の改装が仮定され、上位の知識は下位の知識カテゴリーとして機能する。(例:「動物-猫-マンチカン」)
階層内であっても、距離の近い知識同士のほうが速く検索される。(「マンチカンはネコか?」という質問に対する反応のほうが、「マンチカンは動物か?」という質問に対する反応よりも早くなる。)
ロフタスによって提唱された概念。
意味ネットワークで仮定したような概念間の階層構造は想定せずに、意味的に類似性が高いものほど近くに配置され、共通する特徴にしたがって、他の概念と連結される立体ネットワークを想定する。
概念間の連結は階層の違いではなく、類似性に基づく結びつきの強さとして捉え、距離として表現される。
プライム刺激によって、ある概念が活性化されると、ネットワーク上で近い位置にある概念への活性化が拡散される。
また、長期記憶の潜在記憶でも説明できる。
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意識や潜在意識の境界領域よりも下に刺激を与えることによる効果をサブリミナルという。
これは、認知の素早いサポートをするとされている。
プライミングは認知心理学の重要なテーマです。
直接的プライミングと間接的プライミングについて、具体例や関連理論を交えながら紹介しました。
「先行刺激が、後続の学習に影響をあたえること=プライミング」という定義に加え、上記の詳細な内容も抑えておくことをおすすめします。