「臨床心理学」の心理汗セメントにおいて主要な投影法のパーソナリティ検査であるロールシャッハ・テスト(rorschach test)について解説します。
ロールシャッハ,Hによって開発された投影法のパーソナリティ検査。
インクを落として作った左右対称の多義的な無彩色、有彩色5枚ずつ(合計10枚)の図版を検査刺激とする。まず、被験者にこれらの図版が何に見えるのかを口頭で答えてもらい、検査者はその図版のどのような特徴がそのように見えたのかを答えてもらう。
(図版は白黒5枚、白黒と赤2枚、多彩色3枚である。)
被験者の回答から、反応決定因、反応領域、反応内容、形態水準などを測定する。これらの多様性や個人差を手掛かりにして、認知的、知覚的、感情および情緒的側面、自我機能の側面を評価していく。
※開発者のロールシャッハは、この検査について何に見えるかという想像力よりも以下に見えるのかという知覚を重要視した。
実施・結果の解釈法にはいくつもの種類があるが、日本において有力なものは包括システムと片口法である。
以下に詳細を示す。
エクスナーによって考案されたもの。
客観性を重視したベック法をベースにしたとされているロールシャッハ・テストの実施・解釈方法で、膨大なデータを統計処理した実証主義的な研究に基づくため、被験者間の判定誤差を小さくできるという特徴がある。(これまでの理論を統合したことから包括システムと呼ぶ。)
※構造分析を主とし、客観的な評価・診断に重きを置く。
【実施方法】
①座る位置、②教示、③計時(反応時間は測らない)、④反応数(一定の反応数を求める)、⑤反応拒否(原則として認めない)、について厳密に規定されている。
【解釈】
スコアリングされたものから、構造一覧表を作成し、そこから得られる様々な指標に基づき解釈を行っていく。
また、解釈戦略(それぞれの指標をどの順番で見ていけばよいのかを示すもの)があり、それに基づきながら解釈を行っていくという特徴がある。
これにより、これまでのロールシャッハ・テストにおいて依存されてきた検査者のセンスや経験に基づく解釈ではなく、手続きに従った解釈が可能になった。従って初学者にも、一定のレベルの解釈が可能となった。
・クラスター分析
→統計処理の結果から、人格の各側面を7つのまとまりとして表す。それぞれを構成する変数が、構造一覧表にまとまれている。
・鍵変数
→7つのクラスターをどのような順番で見ていくのかの指標となる変数のこと。重要なクラスターから検討し、他のクラスターも組み入れて解釈していくことにより人物像を明らかにする
片口安史により考案されたもの。
アメリカのクロッパー法をベースにしたロールシャッハ・テストの実施・解釈法で、日本において従来広く用いられてきた方法。
※構造分析に加え、継起分析によって明らかにされる主観的な意味世界の理解に重きを置く。
【実施方法】
① 自由反応段階:図番が以下に見えるか自由に話してもらう段階のこと。
② 質問段階:「何が」「どこに」「なぜ」そう見えたのかなどを尋ねる段階こと。
①→②の順で実施する。
これはいずれも、誘導的・暗示的にならないことが重要である。場合によっては、質問段階が終わった後で限界吟味を行うこともある。
限界吟味とは…
解釈や診断のために、誘導的な質問をして、より詳しい情報を得ようとすること。
【解釈】
①形式分析(サイン・アプローチ)、②内容分析、③継起分析を組み合わせ、かつ検査状況や、検査者-被検査者関係や属性を加味しながらパーソナリティを総合的に評価する。
・形式分析(サイン・アプローチ)
→数量化したものを量的に分析すること。
・内容分析
→カードごとの反応を質的に分析すること。
・継起分析
→カードの流れに沿って反応のつながり方を力動的に分析すること。意味付けと前後の文脈的理解などを解釈する。
心理アセスメントの中でも非常に有名な心理テストのひとつです。
今回は日本において主流な方法である包括システムと片口法の重要点を紹介させていただきました。
まずは、ロールシャッハ・テスト全体の概要を抑え、慣れてきたらより詳細な点の理解に移ることをおすすめします。