「臨床心理学」ならびにその他の心理学において重要な概念である知能の構造(structure of intellect)について解説いたします。
目次
まず前提として、知能の研究には確証がなく、それぞれの研究者による発明である。
従って、客観的な事実の発見ではない。
それゆえ、学者により想定する考え方が異なる。
ここでは以下に挙げる代表的な4つの考え方を取り扱う。
①スピアマンの2因子説
②サーストンの多因子説
③ギルフォードの立体モデル
④キャッテルの流動性知能と結晶性知能
スピアマンは、小学生の成績の分析から、知能には、すべてに共通する知能と各教科に固有の知能の2つがあると考えた。
すなわち特殊因子(S因子)と一般因子(G因子)である。
特殊因子:個別の知的課題や領域ごとに特有に働く知能因子であり、後天的なものであると考えられている。
一般因子:すべての知的課題に共通する知能因子であり、生得的なものであると考えられている。
サーストンは、スピアマンのすべてに共通する一般因子の存在を否定し、大学生と中学生の知的課題の結果を因子分析によって整理した。
その結果7つの知能因子を発見し、これらは独立していると考えた。
【7つの知能因子】
・言語
・語の流暢性
・空間
・数
・記憶
・帰納的推理
・知覚
ギルフォードは、情報処理プロセスに着目し、内容(4種類)、操作(5種類)、所産(6種類)の合計120通り(4×5×6)の知能があると考えた。そしてこれを知能の立体モデルと呼んだ。
・内容:図形的、記号的、意味的、行動的
・操作:認知、記憶、評価、拡散的思考、収束的思考
・所産(処理の結果):単位、類、関係、体系、変換、含み
※ギルフォードはこの中でも特に、可能性を広げていきアイディアを生み出していく拡散的思考と、可能性をまとめあげ1つの結論を導いていく収束的思考の2つを重要視した。
キャッテルは、因子分析によって知能を更に整理し直し流動性知能と結晶性知能の2因子を見出した。
・流動性知能:新たな場面への適応に必要な知能である。主に非言語性(計算、推理、図形)に反映されるといわれている。
・結晶性知能:経験や学習によって獲得した知識や技術で構成されている知能である。主に言語性(単語や一般的な知識)に反映されているといわれている。
流動性知能は20歳前後をピークに加齢とともに衰えていくが、結晶性知能は加齢とともに減少せず、上昇し続けるといわれている。
知能の構造について代表的な4人の研究者の知見をぜひ理解してみてください。
また、知能検査についてもリンクを貼っておいたのであわせてご覧いただけると理解が広がると思います。
ぜひチェックしてみてください。