「発達心理学」における重要な概念のひとつである移行対象(transitional object)について解説いたします。
ウィニコットによる概念である。
移行期(1~3歳)において、肌身離さず離さず持っている人形やぬいぐるみ、タオルなどのような客観的存在物で、特に不安が高まった時などに抱きしめるような愛着対象のことをいう。
(過渡対象ともいう。)
母親の感覚を思い出させることで、情緒的安全基地として機能しており、客観的な者でありながら、主観的な意味づけが色濃くされている。
移行対象は、子供にとって母親のような安心感を与えるものである。
ウィニコットによれば、母親への絶対的存在の状態における万能感を錯覚と呼び、ここから相対的な依存の状態における基本的な現実検討能力の獲得である脱錯覚へと移行する。
(この過程での愛着対象である。)
移行対象は、母親などの愛着対象を思わせるものである。一般的に毛布やぬいぐるみなど軟らかいものがイメージされやすいが、かならずしもそれだけというわけではない。
口に入れたり、触れたりした際に、本来の愛着対象に似ているものが移行対象となる。
※つまり、移行対象は身近な愛着対象と密接な関わりがあるといえるものである。
移行期に見られる、完全な主観的世界でもなく、客観的世界でもない、特有の主観的世界を指して移行領域(中間領域)という。
この時期、移行対象は外界と関わる子供の緊張を和らげるという重要な役割を果たすと考えられている。
➤心理学用語:愛着とは?内的作業モデルや安全基地を解説【関連用語】
移行対象は「発達心理学」や「精神分析学」の領域で非常に重要な概念のひとつです。
子供の愛着や世界を考えるうえで、必須ですのでぜひ理解しておいてください。
また、錯覚や脱錯覚、移行領域(中間領域)の内容もぜひ抑えてみてください。
子供は移行対象への執着の時期を経て、やがて外界へ適応していくというステップを歩みます。