「認知心理学」並びに「知覚心理学」における重要な概念のひとつである運動の視知覚(Visual perception of motion)について解説いたします。
目次
視覚的運動は、刺激の条件によって実際運動と仮現運動に分けられる。
・実際運動:対象物が実際に運動することで知覚される運動のこと。
・仮現運動:物理的な運動が生じていない対象を見たにも関わらず、見かけ上の運動を知覚する現象のこと。
※仮現運動(apparent movement)は、主に広義のものと狭義なものを抑えておく必要があります。
広義の仮現運動として代表的なものを以下にあげる。
・自動運動
・運動残効
・誘導運動
自動運動とは、暗所で光点を凝視し続けると、実際には止まっている光点が動く(動いて見える)現象のことである。
これは、止まっているものが動いて見えるという意味で一緒の錯覚現象である。
(自動運動の近くのされやすさには、個人差が伴う。)
誘導運動とは、2つの視対象が”囲むもの”と”囲まれるもの”という関係にある時に、実際には全社が動いたにもかかわらず、後者が動いたように知覚される現象のことである。
これは、本来は動いているものが止まっているように見え、本来は止まっているものが動いて見えるという意味で一つの錯覚現象と捉えることが出来る。
例えば、流れる雲に囲まれた月は、雲の動きとは逆方向に動いているように知覚され、更にクモは止まっているように見える。
(これは、対象同士のみならず、対象と自分という関係性においても成り立つ。)
運動残効とは、一定方向へ動く対象を凝視した後、静止した対象を見ると、逆方向に運動しているように知覚される現象のことである。
例えば、渦巻き回転させたものをしばらくの間見た後、静止した渦巻きを見ると、渦巻きの縮小または拡大がみられる。これは渦巻き効果と呼ばれている。
狭義の仮現運動は、ゲシュタルト心理学の祖であるウェルトハイマーが見出したβ運動のことを指す。
β運動とは、物理的・空間的に離れた2つの視対象を、順に提示することで、時間的に先の刺激から後に刺激が移動したように見える現象のことをいう。
例:踏切の点滅
運動の視知覚の問題は、公認心理師ならびに臨床心理士試験、心理学系大学院受験などで頻繁に出題されています。
認知心理学や知覚心理学の基礎ですのでぜひ理解してみてください。