「臨床心理学」の心理アセスメントにおいて主要な知能検査のひとつであるウェクスラー式知能検査(Wechsler’s diagnostic intelligence test)について解説します。

ウェクスラー式知能検査(Wechsler’s diagnostic intelligence test)とは?

1939年に、ウェクスラーによって開発された知能検査。

ウェクスラー知能検査の最初は、ウェクスラー=ベルヴュー知能検査で個人の知能を知的能力ごとに診断的に捉えることを目的としている。

知能を多因子構造として捉え、大きく「言語性検査」と「動作性検査」に分け測定している。

知的能力ごとの診断は、「言語性検査」と「動作性検査」に複数の下位尺度を構成することにより可能となっている。以下に具体例をいくつかあげる。

【ウェクスラー式知能検査の下位尺度】

言語性因子:「知識」「理解」「算数」「類似」「単語」「数唱」など

動作性因子:「符号」「絵画配列」「絵画完成」「組み合わせ」など

結果は偏差知能指数(DIQ)で示され、「言語性IQ」「動作性IQ」「全IQ」が求められる。また、下位検査のプロフィールが表示される。

検査の種類

ウェクスラー式知能検査の大きな特徴として、適用年齢によって扱う検査が異なるという点があげられる。具体的なものを以下に示す。

大人用WAIS (Wechsler Adult Intelligence Scale)

児童用WISC (Wechsler Intelligence Scale for Children)

幼児用WPPSI (Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)

(それぞれ頭文字をとった名称になっている)

WAIS WISC WPPSIについて

現在(2019年時点)、大人用のWAISが第4版であるWAIS-Ⅳ、児童用のWISCも第4版であるWISC-Ⅳが使われている。

これらと、WPPISについてより詳細に紹介していく。

WAIS-Ⅳ

成人用のウェクスラー知能検査の第4版である。

2018年に刊行された。

適用年齢:16歳~90歳11カ月まで。

構成:15の下位検査(10の基本検査と5の補助検査)を実施する。

特徴:「言語理解(VCI)」「知覚推理(PRI)」「ワーキングメモリー(WMI)」「処理速度(PSI)」と「全検査IQ(FSIQ)」をあわせた5つの合成得点を算出する。※ディスクレパンシーを算出することも可能。

一般知的能力の算出:補助の得点として、合成得点とは別に一般知的能力(GAI)を求めることが可能。(全検査IQ-ワーキングメモリー+処理速度により求める。)

WAIS-Ⅲからの大きな変更点として、適用年齢の拡大(WAIS-Ⅲは16~89歳)、群指数→合成得点があげられる。その他、下位検査の変更がある。

また、WAIS-Ⅲでは言語性検査と動作性検査それぞれ7種類から構成されていた。

WISC-Ⅳ

児童用のウェクスラー式知能検査の第4版。

2010年に刊行された。

 

適用年齢:5歳~16歳11カ月

構成:妥当性の低さが問題視されていた、言語性IQと動作性IQを廃止し、15の下位検査を実施する。

特徴:「言語理解(VCI)」「知覚推理(PRI)」「ワーキングメモリー(WMI)」「処理速度(PSI)」の4つの指標得点を算出する。結果は、全検査IQ、指標得点、7つのプロセス得点、下位検査のプロフィールで表される。※ディスクレパンシーを検討することも可能。

プロセス得点とは、下位検査の成績に関わる認知能力のより細かい情報を提供する指標のことである。

WPPSI

乳児用のウェクスラー式知能検査。

適用年齢:3歳10カ月~7歳1カ月

構成:言語性検査6種類と、動作性検査7種類の下位検査で構成されている。

結果:言語性IQ、動作性IQ、全検査IQが算出される。また、下位検査のプロフィール表示がされる。

関連用語

ディスクレパンシー

知的能力間の得点の差。例えば、言語性IQと動作性IQの差や指標得点間の差のこと。

このディスクレパンシーを分析することによって、被験者の知能の偏りなどの特徴が分かる。

偏差知能指数(DIQ)

ウェクスラー式知能検査の結果の表示方法として導入された数値である。

平均的な知的能力と比較してどの程度の知的能力を持っているのかを示すことが出来るもの。

それぞれの年齢集団における知能テストの成績分布が平均=100、標準偏差=15の正規分布になるように得点換算したものをいう。

DIQ=100が基準となり、偏差も示されるため、同年代の受験者の中の位置づけが明確にできる。

【偏差知能指数(DIQ)の算出式】

偏差知能指数(DIQ)={15×(個人の得点-母集団の平均点)÷母集団の標準偏差}+100

ポイント

ウェクスラー式知能検査は、知能検査として非常に有名な検査です。

概要や特徴を理解しておいてください。

また、WAIS、WISC、WPPSIの内容も抑えておくことをおすすめします。

また、知能検査として同様に有名なビネー式知能検査についても解説しています。あわせて参考にしていただければ幸いです。

➤【関連】心理学用語:ビネー式知能検査

viuo

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