「認知心理学」の分野における重要用語である作動記憶(working memory)について解説します。
従来の短期記憶が、情報の貯蓄機能といった静的な側面を重視するのに対し、作動記憶は遂行中の課題に対してどのようにして情報が操作され処理されるかといった動的な側面を重視する。
(短期記憶の概念を発展させた考え方です。)
バッテリーとヒッチによると作動記憶は、
言語的情報の処理を司る→音韻ループ
視覚的・空間的情報処理を司る→視空間スケッチパッド
これら2つの下位システムを制御する中央制御部(中央実行系)から成る。
※近年、視空間スケッチパッドと音韻ループからの情報を統合した情報を保持したり、長期記憶のアクセスや統合を行うエピソードバッハを追加している。
<作動記憶の具体例>
算数の暗算をするときに、計算が終わるまで途中の数を記憶しておく必要がある。つまり、作動記憶は、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程のことを指しているということである。
13+9をする場合、答えの1の位に2が入るが、10の位の数値を考えている際にも、1の位の2を取っておいている。これが作動記憶である。
作動記憶は、短期記憶を単なる情報の一時的貯蔵庫として捉えず、情報処理のフィールドとしての機能を重視した考え方である。
・音韻ループ
・視空間スケッチパッド
・中央制御部(中央実行系)
・エピソードバッハ
・情報処理のフィールド
・作動記憶(working memory)
作動記憶は、初学者ですと取っつきにくい考え方だと思います。まずは、算数の暗算などをイメージして具体例で覚えることをおすすめします。
短期記憶の概念を発展させたのが、この作動記憶ですが、従来の短期記憶(情報の貯蓄機能といった静的な側面)と作動記憶(情報の操作や処理過程といった動的な側面)の違いを明確にしておくことが重要です。
この時、単なる情報の一時的な保管場所としてではなく、「情報処理のフィールド」というワードがわりと重要になってくるのではないかなと思います。
また、バッテリーとヒッチによるモデル(音韻ループ,視空間スケッチパッド,中央制御部)や、近年追加されたエピソードバッハ(長期記憶のアクセス、統合を行うもの)を抑えておくと理解が深まるでしょう。
また細かい話ですが、作動記憶をワーキングメモリーとそのまま呼ぶ場合もあるので注意しておいてください。
短期記憶や、記憶全般についての用語まとめは別の記事にまとめてあります。合わせて勉強してみてください↓