「臨床心理学」や「精神医学」における重要な概念のひとつである認知的評価モデル(Cognitive evaluation model)について解説いたします。
目次
ラザルス,R.S.が提唱した理論。
ストレッサー(生体に対する有害刺激)がそのまま、ストレス反応に直結するのではなく、同じストレッサーであっても、生体側の評定と対処プロセスによって度合いや生体への影響力が異なると考えるモデルである。
(ラザルスは、生体側の主観的な認知評価を重視した。)
セリエ,Hが生理学的ストレスを提唱したのとは異なり、ラザルス,R.S.は心理学的ストレスを理論化した。
認知的評価モデルでは、ストレッサーに対して行われる一次的認知評価と、ストレスに対して行われる二次的認知評価の二種類がある。
そして、この2種類の評定を基にストレスコーピングが行われるという図式を示している。
■ 一次的認知評価(一次的評定)
→ストレッサー自体の大きさや脅威の程度を判断する過程のこと。
■ 二次的認知評価(二次的評定)
→ストレスにどの程度対処できるのかを判断する過程のこと。(自己効力感と関連している。)
■ コーピング
→ストレスを低減するための意識的行動のこと。
※自己効力感(self-efficacy)とは、自分の学習能力や遂行能力に対する具体的な地震や機体、信念のことである。
コーピングとは、対処行動のことを指し、ストレスに対処するプロセスのようなものである。
コーピングには、問題焦点型コーピングと情緒焦点型コーピングの2種類がある。
→問題を変化させ、直接解決しようと試みる対処法略である。
問題を直接なくせるというメリットがあるが、対人関係の問題などにおいては、現実的に難しい側面も多い。
(例)
・ある上司がストレッサーである場合、当該上司に近づかない。
・部屋が暑かったら冷房をつける。
・騒音がうるさかったらその場から遠ざかる。
→認知面に働きかける対処法略であり、気晴らしなどの感情的苦痛の軽減を目的とするものである。
問題(ストレッサー)を直接なくせない場合、自分自身の認知を変容させることが出来るとストレスは低減する。現実的に状況が大きく変えられない場合に有用な方法である。
(例)
・ある上司がストレッサーだが、当該上司をそこまでネガティブなものではないと思う。
・嫌な予定があったとしても、その後に楽しいことが待っていると思う。
(一般的に、問題焦点型コーピングのほうが、情緒焦点型コーピングよりも不安や抑うつ傾向が弱いとされている。しかし、コーピングはバランスが重要である。)
心理的・社会的資源は、ストレスのコーピングを支えるものであると考えられており、特にソーシャルサポートが充実している場合、ストレスの悪影響を受けにくいことが確認されている。
ラザルスの認知的評価モデルはストレスコーピングの考え方をきれいに示した非常に重要な理論図式です。
認知的評価やコーピングの種類、全体的な内容、流れをぜひ理解しておいてください。