「臨床心理学」や「精神医学」における重要な概念であるストレス(stress)と汎適応性症候群(general adaptation syndrome;GAS)について解説いたします。
目次
ストレス(stress)とは?
生理学者のセリエ,Hが提唱した概念。
心的負担となる出来事や状況により、その人の内部に生じる緊張状態のことを指す。
言い換えると、外界からのストレッサーに対する生体の非特異的反応と言える。
(圧力、苦悩、圧迫といった意味で用いられることが多い。)
ストレッサーとストレス耐性
ストレスの原因となる外的な刺激のことをストレッサーという。
ストレッサーは様々なものがあるが、ストレッサーが作用することによりストレス反応が生じる。
つまり、生体に与えられた有害な刺激のことを指してストレッサーという。
※ストレッサーすべてにストレス反応が生じるわけではなく、刺激の種類に応じた特異的反応を示す場合もある。(ストレス反応は非特異的反応である。)
※また、ストレッサーに対して生体が押し返す力のことをストレス耐性という。
ストレス反応=「ストレッサー」-「ストレス耐性」というイメージである。
【ストレッサーの種類】
■ 心理的ストレッサー
→不安、恐怖、怒り、妬み、嫉妬、対人関係の問題など。
■ 物理的ストレッサー
→温度、音、天気、汚染物質など。
■ 生理的ストレッサー
→感染、痛み、かゆみ、炎症、体調不良、眠気、空腹など。
■ 化学的ストレッサー
→空気、薬物など。
汎適応性症候群(general adaptation syndrome;GAS)とは?
同じく、セリエ,Hが提唱した概念。
ストレッサーに対する生体の非特異的反応のこと。
ストレッサーに対する抵抗力の増減を表している。
生体に与えられたあらゆる有害刺激は、どのようなストレッサーに対しても共通の非特異的な生理的変化を起こす。
・抵抗力がストレッサーに打ち勝つと、生理的反応は次第に元の状態に戻る。
・ストレッサーが強く時間的にも長いと、生体が抵抗できなくなり、様々な身体的疾患にかかる可能性が出てくる。
器質的・機能的な障害が認められる疾患で、過度の心理社会的ストレス(心因性)が関与している身体疾患を心身症という。
心身症は、心理的負担となる出来事が、長期間解決せず、緊張状態が持続すると罹患しやすくなる。
心身症の場合、身体の不調を訴えてないかを受診する場合が多いが、原因が心理的な問題であるため、治癒には心理的問題の解決が条件となる。そのため、心療内科や精神科が治療に関わる必要がある。
汎適応性症候群の生理的変化の3過程
第1段階: 警告反応期
警告反応期は、ストレッサーに抵抗するための準備が整えられる。
前半のショック相と反ショック相に分かれる。
ショック相では、ストレッサーが与えられた直後に副交感神経が優位になり、一時的に身体の抵抗力が減少する。
反ショック相では、防衛反応として交感神経が優位になり、抵抗力が高まる。
第2段階: 抵抗期
ストレッサーに対する抵抗力が正常時を上回って増加し、高い緊張状態を維持する。
外的刺激に対して、一定の安定が保たれる時期である。
交感神経が優位であり続ける。
第3段階: 疲はい期(疲労期)
ストレッサーが長期間維持すると、抵抗力はやがて低下する。
身体がストレッサーに耐えきれなくなり、交感神経・副交感神経共に機能が低下し、心身ともに衰弱した状態になる。
そして、様々な適応に障害が生じるようになる。
3過程の内、最も危険な時期が疲労期であり、急激な無気力や重い病気になる可能性もある。
従って、疲労期に入る前に適切な介入が求められる。
ストレスとホルモンの関係
第1段階:生体反応
自律神経系による心拍数の増加、消化器官運動の低下などが生じる段階。
第2段階:内分泌系反応
視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の賦活化のよって血中副腎皮質ホルモンの増加などが見られる。
※コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、過剰分泌すると海馬の委縮や免疫力が低下する。
第3段階:免疫系の変動
長期間にわたるストレス状況により、内分泌系のホルモンの変動により免疫系に支障をきたす。
第4段階:行動変容や感情変化
不安や抑うつなどが生じる。
行動的には、暴飲暴食、不眠、食欲の減退などが見られる。
ポイント
ストレスは一般になじみのある言葉で、悪いものであると心理的問題や心身症と関連するというイメージが付きやすいかと思います。
本記事で紹介したストレスの初歩的な理論を理解しておくことは非常に重要だと思うのでぜひチェックしてみてください。
また、汎適応性症候群についても理解しておくことをおすすめ致します。
➤心理学用語:認知的評価モデルとストレスコーピング【ストレスへの対処理論】