「発達心理学」における重要用語であるライフサイクル論(life cycle)について解説していきます。
エリクソン,E.H.によって提唱された生涯発達段階論である。(フロイトの性的発達段階論を参考にして)
生を受けてから死に至るまでを8つの段階に分け、各段階の発達課題と心理社会的危機を整理した理論。
エリクソン,E.H.はライフサイクルを自我機能の発達という側面から、人間の発達段階を8段階に分けた。
そして、各段階においてそれぞれ、発達課題と心理社会的危機を次のように体系化した。
発達段階(年齢) | 発達課題vs心理社会的危機 |
乳児期(0~2歳ごろ) | 基本的信頼vs不信 |
幼児前期(2~4歳ごろ) | 自律性vs恥・疑惑 |
幼児後期(4~5,6歳ごろ) | 積極性vs罪悪感 |
児童期/学童期(6~12歳ごろ) | 勤勉性vs劣等感 |
青年期(13~22歳ごろ) | 自我同一性vs自我同一性拡散 |
成人期(22~40歳ごろ) | 親密vs孤立 |
中年期(41~65歳ごろ) | 生殖vs停滞 |
老年期(66歳以降) | 統合vs絶望 |
エリクソン,E.H.は、人間は生まれてから死ぬまで生涯発達し続けるという論理を展開している。そして、各発達段階で遭遇する発達課題と心理社会的危機の両方を経験しながら、発達段階をステップアップさせるという理論図式を描いた。
エリクソン,E.Hは、この8つの発達段階の中で特に青年期を重要視して理論を深めていった。
ポイント①:青年期は第二次性徴により肉体的に大人に接近することで、子供ではないことを知らされると、親や長年者の価値観を盲目的に受け入れられなくなり、自我同一性(アイデンティティ)を確立しようとするようになる。
ポイント②:青年期を自我同一性(アイデンティティ)の探求のため、本来大人が背負うべき義務や責任が免除されている期間であると主張し、これをモラトリアムと呼んだ。
ポイント③:モラトリアムを経て「自分とは何者なのか」「どのように生きていくのか」といった問いに対し肯定的に、かつ確信的に回答できるようになることを、自我同一性の達成と呼んだ。一方で、これに失敗し自分の存在価値を見出すことが出来ない状態になることを、自我同一性の拡散と呼んだ。
エリクソン,E.H.は自我同一性の基本要素として以下の3点を挙げた。
①:同一性
→自分が他者とは代替不可能な固有の存在であることを認知した状態。
②:連続性
→過去・現在・未来を通して自分自身が一貫して同じ自分である感覚を持った状態。
③:帰属性
→ある特定の社会集団に所属してその集団に受け入れられている感覚を持った状態。
これら3つの要素を基に、自我同一性は主観的側面と社会的側面から構成されるとした。
※自我同一性の拡散とは、過去から現在にかけて自分自身という感覚が適切に統合されず、果たすべき社会的役割や価値が見いだせず、周囲からの承認も得られないという心理状態を指す。(通常はモラトリアム期の適切な利用で克服して適応的な心理状態になる。)
境界例では青年期において拡散状態が慢性化し結果として不適応(同一性拡散障害)が見られる。
・発達課題
・心理社会的危機
・自我発達
・自我同一性(アイデンティティ)
・自我同一性の達成
・自我同一性の拡散
・同一性
・連続性
・帰属性
ライフサイクル論の8つの発達段階の、発達課題と心理社会的危機の名称を抑えておくことは大切です。
エリクソン,E.H.が特に重視した青年期の心理社会的特徴と自我同一性の意味を理解しておくことが特に大きなポイントになります。