「発達心理学/精神分析学」の分野において重要な心理性的発達段階論(psychosexual development)について解説していきます。
目次
心理性的発達段階論(psychosexual development)とは?
精神分析の祖であるフロイト,Sが、発達段階を性的エネルギーであるリビドーの所在をもとに、「口唇期」「肛門期」「エディプス期」「潜伏期」「性器期」の5段階に分類した理論。
内容
第1段階:口唇期 (oral phase)「生後0~1歳半ごろ」
⇒授乳によって母親から栄養を得ることが最優先であるこの時期はリビドーが口唇に集中している。この時期、吸う行為(快)、噛む行為(不快)という衝動的な行動の調節がイド(エス)によって行われる。
その結果、「接近・愛着欲求」と「回避・攻撃欲求」という2つの本能衝動の調節をする仕組みとして、イド(エス)の基本的メカニズムが発達する。
※口唇期に固着すると、授乳による快楽を得られなかったことに対する執着が生じてしまい、他者への依存を強固に求めやすくなる。=口唇性格
第2段階:肛門期 (anal phase) 「1歳半~3歳半ごろ」
⇒自分の身体を意識的にコントロールすることが可能となる。この時期、一定期間我慢し、適切なタイミングで社会的に承認されるトイレという場で排泄することが求められる。このため、リビドーが肛門に集中している。
つまり、イド(エス)による衝動・欲求の開放や充足を現実の状況に合わせて調節する心的メカニズムである自我(エゴ)が発達する。
※トイレットトレーニングがきびしくなりすぎると、この時期に固着することになる。肛門期に固着すると、頑固・倹約・几帳面といったパーソナリティ傾向が生じる。=肛門性格
肛門性格は、強迫神経症につながったり、低い自己価値観をもってしまうことにつながるとされている。
第3段階:エディプス期 (phallic stage) 「3~5歳ごろ」
⇒男根の有無により、見た目上の性差に意識が向き始める。リビドーは生殖器に集まっている。
この時期に、エディプスコンプレックスという葛藤が生じる。
この葛藤を乗り越えることにより、母(女児の場合は父)への性愛の抑圧から社会には道徳や規範があることを知り、超自我(スーパーエゴ)を形成する。
また、父(女児の場合は母)への同一視から男性らしさ(女児の場合は女性らしさ)を自分の中に取り入れ、性役割を獲得する。
※男根気に固着すると、性役割が混乱したり、権威に盲目的に服従してしまうなどの性格傾向になる。また、自己顕示的でヒステリー性格になるとされている。
エディプス・コンプレックスについての詳細は長くなるので別に記事を用意しました。以下よりご覧ください。
第4段階:潜伏期 (latent period) 「6~12歳ごろ」
⇒リビドーが一時的に抑圧されて、異性に対する関心が薄くなる。
勉学やスポーツに集中する時期とされる。
第5段階:性器期 (genital stage) 「12歳以降」
⇒潜伏期で抑圧されたリビドーが再び顕在化し、そのリビドーは親ではなく他者へと向けられるようになる。
そして、恋愛に関心が行くようになる。
キーワード
・口唇期 (oral phase)
・肛門期 (anal phase)
・エディプス期 (phallic stage)
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・イド(エス)
・自我(エゴ)
・超自我(スーパーエゴ)
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・肛門性格
・ヒステリー性格
ポイント
発達心理学においても、精神分析学においても超重要項目です。
5つの発達段階の名称と特徴を抑えておくことはとても大切です。
特に最初の3段階(口唇期、肛門期、エディプス期)の特質や、固着した場合の状態を抑えておくことはポイントになります。
(固着とはリビドーがある特定の発達段階に停滞してしまうことです。)