「臨床心理学」の心理アセスメントにおける主要な検査のひとつである顕在性不安尺度(Manifest Anxiety Scale)について解説します。
(当サイトでは、以降よりMASと呼びます。)
テーラーによって開発された尺度。
慢性的な不安傾向を測定するための質問紙検査で、対象者がもともと持っている性格傾向としての不安のなりやすさである特性不安を測定するもの。
臨床現場においてクライエントが、身体的・精神的な症候としてどの程度不安感を持っているのかという意識的なものを測る際に用いられることが多い。
MASにより相対的な不安の強さと性質を測定し、極端に得点が高く日常生活に支障をきたしている場合、専門的な治療が必要な場合もある。
・身体的な症候:発汗や赤面、心拍上昇など。
・精神的な症候:緊張、心配など。
一方で、短時間で比較的簡単に実施することが可能なため、健常群向けにも利用されることもある。(個人にも集団にも利用可能)
※適用年齢は16歳以上とされている。日本語に標準化する際に、16~60歳までの幅広い年齢層を対象に利用できるように構成された。
(児童用としてCASが作成されている。)
ミネソタ多面的人格目録(MMPI)の中の不安に関する質問50項目と、妥当性尺度のL尺度(虚偽尺度)から15項目、合計65項目から構成されている。(日本語版)
これらの質問項目に「はい」「いいえ」で答えていく。
「はい」を1点、「いいえ」を0点として採点する。
おおよその統計を以下に示す。
・健常者:11点~14点前後
・統合失調症:15点~20点前後
・不安症:21点以上
・うつ病:14点以上
L尺度(虚偽尺度)が11点以上で妥当性なしと判定される。
また、統計的偏差から男性で23点、女性で26点を超えた場合高度の不安を有すると判定される。
顕在不安とは、自分自身で身体的・精神的な不安の症候が意識化できたものを指す。
これまでは、行動観察や面接により主観的に捉えることが多かった不安を、MASの登場により客観的に測定することが可能になったといえる。
MASは不安を測定すす検査としてSTAIと並び多用されている尺度です。
MMPIから抜き出しているため、妥当性も測定することが可能で友好的な不安尺度と言えます。
STAIは特性不安と状態不安の両方を測定するための検査ですが、MASは、顕在的な測定不安を測定するための検査です。このような詳細な点まで覚えておくことがポイントです。
また、不安症に対する正確な知識も重要となってきますので、あわせて抑えておくことをおすすめします。