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心理学用語

心理学用語:不安と不安障害

不安障害

「精神医学」における主要な精神疾患である不安障害(anxiety disorder)について解説します。

不安障害(anxiety disorder)とは?

不安とは、危険な状況や恐怖状況にあるときに生じる自然な生理的反応である。これが極端に過剰なために起こる障害を不安障害と呼ぶ。

頭痛や発汗、息苦しさや、自律神経の乱れを伴う。

有病率は男性よりも女性のほうが2倍多く、特に青年期頃の発症が多い。

また不安障害は他の不安障害やうつ病、強迫症などとの併存率が高い。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)強迫性障害はDSM-5より不安障害から独立した。

DSM-5における分類

DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル)において不安障害は主に以下のように下位分類されている。

社交不安障害

パニック障害

特定の恐怖症

社交不安障害

スピーチなどの対人的な場面で、恐怖や不安を過剰に感じてしまう。緊張や不快さが強すぎるため、対人場面を次第に避けるようになり、社会生活に支障をきたす精神疾患である。

具体的な症状としては、動悸や息切れ、吐き気や震え、赤面や発汗などの身体的な症状が顕著に表れる。

(二卵性双生児と一卵性双生児を比べた研究から、一卵性双生児のほうが一致率が高く遺伝的要因が報告されている。)

社交不安障害を診断するための質問紙として、リーボヴィッツが考案したLSAS=J(リーボヴィッツ社交不安尺度)がある。

これは、様々な24の状況に対する「恐怖感/不安感の程度」と「回避の程度」を4段階で回答するものである。

パニック障害

予測不可能な繰り返し生ずる、パニック発作発作への不安という特徴を持つ精神疾患である。

 

突然起こる身体の異常とともに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安感に襲われることもある。

具体的な症状としては、頻脈や動悸、発汗や震えなどが挙げられる。

発作がいつ起こるか分からないため、発作の再発を恐れる予期不安が強くなる。予期不安のために外出や雑踏を恐れる広場恐怖を併発する場合が多い。

例えば、公共交通機関や、市場、映画館、デパート混雑などで広場恐怖は生じる。

(広場恐怖は、DSM-5からパニック障害とは別の診断分類として独立した。)

パニック発作とは、強い恐怖や不安に突然襲われ、動機・発汗・震え・息切れ・めまいなどの身体症状や、死への切迫感統制不能感が生じる不安発作のことである。

特定の恐怖症

特定の対象や状況に対して、著しい恐怖を感じ不合理な回避行動をとろうとすることを特徴とする精神疾患である。

DSM-5では、不安や恐怖を感じる対象や状況について、状況型(閉所や高所、エレベータ等)動物型自然環境型血液・注射・外傷型、その他に分けられている。

恐怖症を獲得する条件づけには、直接経験と代理学習によるものなど複数の経路が考えられている。これらには刺激の対呈示により不安反応が作られるという古典的条件づけと、不安が苦痛を伴う情動を回避することで強化されるというオペラント条件づけによって説明がつくと考えられている。

治療

主に、薬物療法や認知行動療法、森田療法が用いられる。

特に不安障害に対する心理療法として多く用いられる認知行動療法では、恐怖刺激や不安を喚起するような刺激に対してエクスポージャーしたり、リラクゼーションと不安を対呈示しながら徐々に馴れさせていく系統的脱感作法が頻繁に用いられる。

また、不安階層表などを用い徐々に馴化させていく場合もあれば、強度の高い不安場面にいきなりさらす(フラッティング)こともある。

具体的には自律訓練法漸進的筋弛緩法を用いリラクゼーション状態を作る。

社交不安障害に対しては、思い込みの活性化や社会危機の察知に寄与してしまうと考えられている自己注目に焦点を当てた認知行動療法モデルが広く知られている。

薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬である。

ポイント

不安障害は神経症圏の精神疾患の中でも代表的なものです。

各疾患の症状や特徴を抑えておくことがポイントだと思います。

学習理論を用いた解釈が一般的であり、不安障害に対する心理療法では認知行動療法が主流です。各理論をしっかりと抑えておくことをおすすめします。

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