「臨床心理学」における心理療法のひとつであるナラティブセラピー(narrative therapy)について解説します。
ホワイトらによって創始された心理療法である。
クライエントの語る問題のドミナント・ストーリー(浸透したストーリー)を、セラピストとの対話を通してクライエント自身がそれを再構築してオルタナティブ・ストーリー(新たな、肯定的・建設的なストーリー)を作ることで、クライエントの様々な能力やリソースを見つけ出し問題解決を目指す技法のこと。
システム論の影響を受けて発展した社会構成主義に基づく心理療法であり、物語療法と訳される。
ナラティブセラピーでは、クライエントの病理や問題はクライエントが作り出した物語の結果であると考え、クライエントを支配する「問題の浸透した物語」をセラピストとの対話を通して、「新たな物語」へと自らが語ることで編集しなおしていく。
セラピーにおいて、セラピストは無知の姿勢を取ることが求められる。
※無知の姿勢とは、セラピストのもつ専門的な知識や理論、個人的な偏見などに基づいてクライエントの経験を解釈せず、また早急な理解を避け、クライエントの話の文脈の中で、理解を共同探索していく姿勢のことである。
また、クライエント自身がこれまで否定・歪曲してきた内容に気づかせるためには、病理や問題をキャラクター化させて語らせる外在化技法がとられる。
客観的かつ絶対的な物事の存在を前提とせず、現実は現象に対してどのように捉え、どのように定義し、語り合うかによって社会的に認識されるようになるものであると考える哲学の立場である。
=social constructionism
つまり、決まりきったひとつの現象が存在するのではなく、起こったことをどのような言葉を用いて考え、会話するかによって色づけられていき、ポジティブにもネガティブにもなりうると考えることをいう。
※臨床心理学的には、回想法や家族療法、ナラティブセラピーの元となっている哲学感である。
専門用語が多数出てきますので勉強する際は注意して抑えておくことをおすすめ致します。
ナラティブセラピーでは、クライエントとセラピストとの語り合い(対話)を通して、クライエント自身の口で起こった事象を建設的な物語へと作り直していくという考え方を基盤に置いています。
それこそが社会構成主義です。辞書で引くと、難しい哲学用語に見えますが端的に言うと「客観的な事実というものは存在せず、現実は言語を介した人々の相互作用によって構成されている。」となります。
これさえ覚えてしまえば、後はセラピーの内容の理解をしてしまったほうが早いです。
「無知の姿勢」「外在化技法」「共同探索」は特に重要な用語ですのでぜひチェックしておいてください。