「精神医学」における主要な精神疾患のひとつであるPTSD(post traumatic stress disorder)=心的外傷後ストレス障害について解説します。
目次
災害や、事故、暴行などによって、自分自身や他者の生命が脅かされるほどの恐怖と無力感を経験することにより発症する精神疾患である。
ベトナム戦争後、多くの兵士が症状を訴えたことにより注目が高まった。(このころ戦後神経症と呼ばれていた。)
DSM-Ⅳまでは不安障害に分類されていたが、DSM-5ではトラウマとストレス因関連障害に分類されている。
症状の持続期間が1カ月を超える場合→PTSD(心的外傷後ストレス障害)
1カ月未満の場合→ASD(急性ストレス障害)
同グループに適応障害も含められている。
(発症は男性よりも女性のほうが多い。)
DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル:第5版)では症状を以下の4つに分類している。
・侵入症状(フラッシュバック)
・回避症状
・認知や気分の否定的(陰性)変化
・過覚醒症状
外傷的出来事を想起したり、夢を見たり、現実に起こっているかのように行動してしまうなど、反復的で苦痛な反応が生起する。
トラウマ体験に類似した出来事がきっかけとなって、強烈な心理的苦痛や顕著なパニック発作(生理的反応)が起こる場合がある。
外傷的出来事に関する場所、人、思考、感情を避けようとする。
トラウマ体験についての、もしくは密接に関連する苦痛さを呼び起こすようなものを回避しようと努力する。
代償的出来事の重要な部分を想起できなかったり、自分や他者、世界に肯定的感情を体験することが困難な状態になってしまうこと。
幸福、愛情、満足といったような陽性の情動を体験することが不能になってしまう。
緊張のために睡眠困難になったり、怒りや緊張を爆発させたり、集中困難や自己破壊的になる。
繊細なことでびくびくするなど強い不安を感じたり、持続的にイライラすることがある。
第一に必要なことは安全で安心できる環境や関係性を作ることである。
一般的な治療法として薬物療法と心理療法が存在する。
心理療法には、持続的エクスポージャー法(恐怖や不安の対象となる刺激に持続的に暴露する心理療法)などのトラウマ焦点化認知行動療法やEMDRがある。
子供には、遊びによりカタルシスと洞察を得るといった力動的な観点に基づくアプローチである、ポスト・トラウマティック・プレイセラピーも有効だとされている。
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)とはシャピロによって開発されたPTSDを対象とした認知行動療法であり近年注目されている。眼球運動で直接脳を刺激し、脳が本来持っている情報処理のプロセスを活性化させることを目指す。
方法は、心理教育の後、治療者が指を左右に動かし、その動きをクライエントに追視しながらトラウマ体験の想起、肯定的な認知の想起、身体感覚の確認を行う。
実際にもしくは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受けるなど、通常では見られないような強い衝撃をもたらす出来事のこと。
PTSDの症状を測定するための質問紙法として、ワイスとマーマーが考案したIES=R(改訂版出来事インパクト尺度)がある。(22項目)
PTSDの症状はDSM-5において4つに分類されています。
この4つの症状と内容を理解しておくことがまずは大切です。
また、治療や援助法なども重要点ですので抑えておくことをおすすめします。
DSM-5より同グループに含まれるようになった適応障害についても併せて確認してみてください。