「臨床心理学」における重要な治療技法である心理劇(psychodrama)について解説します。
※心理劇=サイコドラマと呼ばれる。
モレノが創始した集団心理療法である。(日本には、松村康平や外林大作が広めた。)
参加者が台本なしの劇の中で、即興的・自発的に役割を演じることを通じて、内的葛藤を表現し、自己洞察やカタルシスへと導く集団心理療法である。
心理劇の構成要素は以下の5つである。
・監督:劇全体(場面設定、進行、配役)を指揮する指導者
・演者:劇の中で実際に演じる人
・補助自我:主役が役割を演じやすいように補助したり、監督を補佐して、劇の円滑な運営を手助けする人
・観客:観劇する人であるが、展開によって演者となる人
・舞台:劇を演じる場所
一般にグループの人数は10人前後で、1回のセッション時間は約60分である。
治療は、
①自己紹介やゲームで心身の緊張をほぐす→ウォーミングアップ
②実際に即興劇を演じる→ドラマ
③劇を振り返り共有する→シェアリング
の流れで行われる。
心理劇で用いられる主な技法を以下に挙げる。
・役割交換法:劇の中で演者が役割を交換する。
・二重自我法:両社が一体であるかのように演じる。
このような技法を用い、参加者は一連の時間を共有する中で、個々の問題への直面化、内面の洞察、カタルシス、他者への理解や新たな気づきなどを体験できる。
非行少年への矯正施設で用いられることが多い。
また、統合失調症や神経症の患者を対象とする場合もある。
心理劇は、あくまで即興的・自発的な劇です。台本は用意されません。
5つの構成要素や主な技法、効果などを理解しておくことが重要です。
なお、集団心理療法として代表的なものにエンカウンターグループもあります。