「発達心理学」における主要な概念のひとつである分離個体化理論(separation-individuation theory)について解説いたします。
マーガレット・マーラーによって提唱された発達理論。
乳児が母親との一体感から徐々に分離していく過程を分離・個体化といい、母親との「正常な自閉期」「正常な共生期」を経た後で生じる「分離・個体期」を4つに分けた理論のこと。
マーラーが示した理論図式は以下のとおりである。
【分離個体化理論】
■Ⅰ期:正常な自閉期 (0~1カ月)
→この時期は、内部と外部、自己と他者の区別がなく、心理的反応よりも生理的反応が優勢である。
■Ⅱ期:正常な共生期 (1~6カ月)
→この時期になると、内部と外部を区別することが可能になる。しかし、自己と他者の区別はつかないため、母子が一体感を経験する共生関係にある。また、この時期の自我を原初自我と呼ぶ。
■Ⅲ期:分離個体化期
・分化期 (5~9カ月)
→母を対象として認識し、特定化するようになる。
・練習期 (9~15カ月)
→母を基地として近くを探索するようになる。
・再接近期 (15~24カ月)
→母を別の存在として認識し、両価傾向を持つようになる。この時期に最も分離不安が高まるとされている。
・再個体化期 (25~36カ月)
→母親表象が統合され、母親から離れることに耐えられるようになる。母親から離れることが出来るようになり他の子供と遊べるようになる。
以上のように、乳児期の子供が母親を捉え、分離していく過程を図式化している。
正常な自閉期と正常な共生期(1~4カ月頃)までをあわせて未分化期と呼ぶ。
※境界性パーソナリティ障害の中心病理である見捨てられ抑うつは、マーラーの分離個体化理論を元にマスターソンによって提唱されたものである。
子供が母親から分離して、個人として生きていく過程に生じる心のプロセスを表した重要な概念です。
臨床心理学的には、この過程に精神病理の背景を説明しようとするものもあります。
また、他の愛着理論や発達理論と共通する部分も多いため、並行して関連用語をチェックしていただくことをおすすめします。
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