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心理学用語

心理学用語:パーソナリティ障害

パーソナリティ障害

「精神医学」における主要な精神疾患のひとつであるパーソナリティ障害(personality disorder)について解説します。

パーソナリティ障害(personality-disorder)とは?

属する文化において期待されることから極端に逸脱した考え方や信念、行動パターンによって、社会生活における持続的な困難が生じてる精神疾患のこと。

現在のパーソナリティ障害は、ドイツの精神科医であるシュナイダーが精神病質という概念で示したものである。シュナイダーは精神病質を以下のように定義している。

※性格の偏りのために、自分で苦しんだり、周囲を苦しめるもの(シュナイダー)。

現在の定義も、基本的にこの定義を継承している。

パーソナリティ障害の分類

DSM-5(精神疾患の診断と診断のマニュアル:第5版)ではパーソナリティ障害を以下の3群に分類している。

A群:奇異で風変わりな行動を示す群

猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害

⇒他人の動機を悪意あるものと感じ、常に疑い深いという特徴を示す。他人を心から信じることが出来ないため、人間関係において適度な距離を保ちながら親しさを楽しむことが出来ない。

シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害

⇒社会的関係から離脱し、対人関係で感情を表さない。このタイプは、孤独こそ最大の幸福であり対人関係に興味がなく独自な世界に没頭するという特徴を示す。

スキゾタイパル(統合失調型)パーソナリティ障害

⇒迷信や精神世界に深い興味・関心を持ち、時として奇妙な行動や言動をとることがある。頭の中で異常な程に思考を働かせる。そして、こうした思考回路は常識を超越しているような独特さを持つという特徴がある。

B群:派手で突飛な行動を示す群

境界性パーソナリティ障害

⇒対人関係・自己像・感情の不安定さ・著しい衝動性を示す。自己や他者に対して過度な理想化をしたかと思えば、逆にこき下ろしをすることもある。そのため、異常に派手な自己破壊的行動をとる反面、見捨てられることを避けるためになりふり構わない努力をする。自己愛の傷つきの中でも、自己愛が著しく低いタイプであるとされている。

自己愛性パーソナリティ障害

⇒誇大性・過剰な賞賛の要求が強く、一派腕他者に対する共感性は低いという特徴を示す。周囲からの非難に対して非常に敏感に反応し、失敗することを深く恐れる。常に自分は特別な存在だと思っており、それにふさわしい成功があるはずだと認識している。自己愛の傷つきの中でも、自己愛が極端に高いタイプであるとされている。

反社会性パーソナリティ障害

⇒他人を搾取するような振る舞いや言動が目立つ。他者の権利を無視して侵害することに対して喜びすら感じることもある。

演技性パーソナリティ障害

⇒過度な演技性反応とと情緒性で、他者の注意を引こうとする。本質の部分に他人を常に魅了しなければ自分は無価値な人間であると思ってしまうという性質がある。

C群:不安や恐怖を感じやすい群

回避性パーソナリティ障害

⇒不全感・社会的抑制・否定的評価に対して過敏という特徴を示す。失敗することを極端に怖がり、自分に自信がない。挑戦して失敗するくらいなら最初から何もしない方がマシだと思い好機を逃すことが多い。

依存性パーソナリティ障害

⇒他者に必要以上の助言を求め、分離に対して過度の見捨てられ不安を感じる。自分の考えに自信が持てず主体的に生きていくことが出来ない。そのため、人生の重要な選択肢さえも他者に委ねてしまうことがある。

強迫性パーソナリティ障害

⇒秩序や完璧主義、対人関係の制御にとらわれ柔軟性がない。責任と義務感をとても大切にして失敗することを絶対に許せないしっかり者タイプである。そのため、うつ病や心身症に罹患する可能性も上昇する。

パーソナリティ障害の優れた点

パーソナリティ障害の人が持つ特徴は一般の社会の認識からは極端に逸脱しているものであり、通常の社会に適応するのは難しい。

その一方で、パーソナリティ障害の人が発達させる適応戦略は時として、かなり独特な個性やライフスタイルを生み出していくことがある。

通常の社会での生きづらさを必死に補おうと、特別な能力を磨いていく場合もある。そして、それが時代の変革に影響を与えるほど大きなものである場合すらある。

「普通とは違う=個性・独自性」として捉えられる場合も多く、もはや障害ではなく能力なのではないかという議論もある。

治療と援助

パーソナリティは遺伝や発達最初期からの生活史の中で少しずつ形成されたものであり、根底から変化させることは困難である。

従って、基本的には周辺環境の整理や周囲への心理教育を行う。

一方で、精神医学的治療では精神症状に対して薬物療法を行う場合もある。しかし、境界性パーソナリティ障害のように、薬物の過量服薬などの危険性がある場合は精神療法が中心となり、臨床心理学的な治療が推奨される場合もある。臨床心理学的治療では、心理教育的アプローチや認知行動療法がおこなわれることが多い。

その際、治療全体のマネジメントは精神科医、心理的アプローチは臨床心理士が行うといった、A-Tスプリットを採用することも少なくない。

(型や症状によって治療方法は大きく異なる。)

<A-Tスプリットとは?>

小此木啓吾が治療構造の一環として名付けた。

治療全体のマネジメントを行う主治医(agministrator)と治療面接などを行う臨床心理士(therapist)が連携しながらクライエントと関わっていくこと。

一般に、主治医は心理治療に関わることはなく投薬を中心とした身体の管理を担当し、臨床心理士はクライエントの心理的な治療・援助を担当する。

ポイント

パーソナリティ障害の3つの型、10の診断名、またそれぞれの特徴を抑えておくことが重要です。

原因や治療法についてはものにより異なる場合が多いので、専門書へのアクセスが必要だと思います。

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