「認知心理学」における主要な理論のひとつである目撃証言の信憑性(The credibility of the witness testimony)について解説いたします。
記憶と目撃証言に関する研究の第一人者であるロフタス,Eに関係する理論である。
何か事件が起こった際、目撃者の証言は信憑性が高いと考えられがちだが、実際には目撃者の記憶は、様々な心理学的要因の影響で変化しうるため、必ずしも信頼を置くことが出来ないということを示した理論。
目撃証言に影響する要因の内主要なものを以下に紹介する。
■誤導情報効果
→目撃後に与えられた情報によって、記憶が実際とは違う方向に誘導されること。
■凶器注目効果
→武器を持った犯人を目撃した場合、目撃者はその犯人の顔よりも武器に目が生きやすいため、顔はあまり覚えていない。
■無意識的転移
→目撃者が事件とは別の場面で見かけた人物と犯人とを誤認すること。
ロフタスは1970年代に、目撃証言の正確さをテストする単純な実験を行った。
この実験では被験者に「自動車事故」の映像クリップが見せられた。その後に被験者は何を見たのかを問われた。
その結果、被験者がどのように出来事を告げるかは、どのような言い方で問いかけられるかに重要な影響を受けるということが分かった。
例えば、「事故を起こした車のスピードはどのくらいであったか?」という問いに対しての答えは、自己を形容する言葉を「ぶつかった」「衝突した」「大破した」などに操作すると、これらに影響を受けて同じ画像でも答えは大きく異なった。
※この研究によって、当の出来事の起こった後でなされる示唆や誘導的な質問によって再生が歪められることが明らかとなった。
人間の記憶が必ずしも信頼のおけるものとは言えないということを表した、ロフタスの印象的な言葉のいくつかを以下に紹介する。
・あなたは真実を、それもすべての真実を語ることを誓いますか?それとも、なんであれ自分が覚えていると思っていることを語りますか?
・実験室でも実生活でも、人々はけっして本当にはおこっていないことがらを信じてしまうことがある。
・人間の記憶は、ヴィデオデッキのレコーダーや映像のカメラのように機能するわけではない。
多くの人間はトラウマ的な出来事についての差異背は正確なものだと思い込んでいます。
しかしそれは本当なのでしょうか?
もしかしたら、誤った情報に基づく誘導尋問によって形作られたものかもしれません。
もしかしたら、私たちの信頼している誰かによって示唆されたものかもしれません。
もしかしたら、出来事後に続いた経験によって歪められてしまっているかもしれません。
もしかしたら、私たち自身の最近の感情や考えあによって歪められてしまっているものかもしれません。
しかし一方で、こうした情動的な重要性ゆえに私たちはそれを活きいきと「思い出す」ことが出来るのかもしれません。
人間の記憶は必ずしも真実を刻み込んでいるとは限りません。それ以上に重要な心の本質を刻み込んでいるのかもしれませんね。