「臨床心理学」の心理アセスメントにおける主要な投影法パーソナリティ検査である主題統覚検査(Thematic Apperception Test)について解説します。
(当サイトでは、以降よりTATと呼びます。)
マレーとモーガンによって開発された投影法のパーソナリティ検査。
人物を含んだ、曖昧で多義的な状況を示した複数枚のカードを提示し、そのカードから被験者に物語を作ってもらい、その物語の主人公の感じる欲求や圧力を分析することによって、被験者のパーソナリティを明らかにしようとするもの。
また、TATを通じて物語を作ること自体が治療になりうるということも考えられている。(基本的には検査目的である。)
※フロイトの精神分析学を基盤に「空想研究の一方法(1935)」という論文で初めて報告されている。
TATの対象は15歳以上である。
※子供用としてCAT(対象:10歳以下、構成:10枚の図版)、高齢者用としてSAT(対象:65歳以上、構成:16枚の図版)も作成されており、各年齢層が回答しやすくなるように工夫されている。
(CATは、ベラックによって考案された。)
(各図版は、少年用(B)、少女用(G)、成人男性用(M)、成人女性用(F)に分かれている。)
【内容】
日常生活における葛藤場面が描かれたカード30枚と、空白のカード1枚の合計31枚で構成されている。
また、多くは人物が描かれているが、何枚かは人物が描かれていないカードもある。
(内11枚が共通カードで、残りの20枚が上記CATやSATなど年齢や性別により異なるカードが用意されている。)
【手順】
通常31枚の中から10枚程度を選択し、5分程度で物語を作成してもらう。
カードが1枚ずつ呈示され、被験者にはそのカードについて、過去・現在・未来にわたる物語を作って自由に報告してもらう。
絵画の人物の性格・感情・思考などを自由に空想してもらう。
TATでは、被験者が作った物語に実際の体験のみではなく、頭の中の空想や想像による産物も含まれているという前提のもと分析を行う。
解釈は、作成者であるマレーの欲求-圧力理論を基盤に行う。
この理論に基づき、被験者の内的欲求と環境からの圧力との葛藤状況をどのように認識し、どのように対処を行うかなどの性格傾向を明らかにする。
欲求-圧力理論とは?
人間が語る物語は、固体と環境との相互作用に対しての表現であり、欲求(他者との親和、好奇心など)と圧力(関係性や権威などの人間的なものと不幸や悩みなどの非人間的なもの)の力動的構造を有すると考えた理論のこと。また、このことをマレーは「主題」と呼び、この主題に個人が意味づけを加えることを「統覚」と呼んだ。
【注意点】
TATは、実施方法や解釈方法が標準化されていないため、信頼性と妥当性に問題があるとされている。
日本において投影法のパーソナリティ検査には、ロールシャッハ・テストが用いられることが圧倒的に多い。
全体的な内容や特徴を抑えておくことが望まれると思います。
また、欲求-圧力理論についても頭に入れておくことをおすすめします。