「臨床心理学」の心理アセスメントにおける主要な知能検査のひとつであるビネー式知能検査(Binet test)について解説します。
1905年にビネーとシモンによって開発され、シュッテルンの考案した知能指数の概念を取り入れ、ターマンによって実用化された世界初の知能検査。また、これを修正・発展させた知能検査。
【概要】
様々な形式と内容から構成される問題が、難易度順(易→難)に配列されていて、どの程度まで正答できたかによって精神年齢を求め、それを生活年齢(実年齢)で割って知能指数(IQ)を算出する。
問題は各年齢群の児童の50%~70%が正答できる標準問題と呼ばれるものである。
※ビネー式知能検査は、要素に分解されない一般知能を測定する検査である。開発者のビネーは、知能は要素に分けられるものではなく統一体として存在するものだと考えている。そして、知能検査は、様々な問題を解決するために必要とされる共通の能力を測定することを目的としている。
(もともとは、精神遅滞の子供の早期発見を目的として作成された検査であった。)
【欠点】
・知能の質的差異が測定しにくい。
・全体的な知能発達度は分かるが、知的能力ごとの違いが分からない。
・児童のみを主な対象としている。
日本で一般に用いられているビネー式検査は1947年に田中寛一によって作成・標準化された田中ビネー式知能検査である。現在はこれを基に、時代に即して2005年に改正された田中ビネーⅤが広く用いられている。上記の欠点も解消されている場合が多い。
以下に詳細を示す。
【田中ビネーV】
・概要:時代に即した知能検査を作成することを目的として、2005年に1987年版の田中ビネー式知能検査を改訂したもの。
・形式:個別式知能検査。(検査者と被験者の1対1)
・構成:問題数は全部で113問であり、「思考」「記憶」「言語」「数量」などの下位概念から測定する。適用範囲は2歳~成人である。また、2~13歳用と成人Ⅰ~Ⅲが分かれており、それぞれ難易度や測定する下位概念が異なる。
・実施時間と実施頻度:実施時間は60~90分で、検査を受ける頻度は1年以上開けてから受けるのが望ましいとされている。
・結果の表示:2歳~13歳までは従来通り、精神年齢と知能指数(IQ)を算出する。14歳以上は精神年齢を算出せずに、偏差知能指数(DIQ)を用いる。また、成人の知能については、「結晶性領域」「流動性領域」「記憶領域」「論理推理領域」の4つに分けて分析的に評価する。(これにより、個人の知能の質的差異を評価できる。)
・おまけ:2歳~13歳用において、精神年齢を明らかにするために基底年齢を明らかにするが、基底年齢を1歳とすることが出来ない場合、参考指標である発達チェックが導入されている。
シュテルンによって考案された、知能検査の結果の表示方法。
知能検査によって得られた精神年齢を生活年齢(実年齢)で割り、それを100倍することによって算出される。
IQ=100を基準として被験者の知的能力の程度が表示できる。
【知能指数(IQ)の算出式】
知能指数(IQ)=精神年齢(MA)÷生活年齢(CA)×100
平均的な知的能力と比較してどの程度の知的能力を持っているのかを示すことが出来るもの。
それぞれの年齢集団における知能テストの成績分布が平均=100、標準偏差=15の正規分布になるように得点換算したものをいう。
DIQ=100が基準となり、偏差も示されるため、同年代の受験者の中の位置づけが明確にできる。
【偏差知能指数(DIQ)の算出式】
偏差知能指数(DIQ)={15×(個人の得点-母集団の平均点)÷母集団の標準偏差}+100
世界初の知能検査ということもあり心理学の中で非常に重要な項目です。
概要や手順などの重要点を抑えておくことをおすすめします。
また、現在の日本で主流となっている田中ビネーVについては詳細を理解しておくことがベストだと思います。
あわせて、以下のリンクからウェクスラー式知能検査もしてみてください。