「臨床心理学」における主要な治療技法である認知療法(cognitive therapy)について解説します。
ベック,A.T.によって開発された心理療法。
自らを否定するようなネガティブに偏った考えが、瞬間的に頭をよぎる否定的自動思考に気づき、適切な思考に修正するように働きかける認知行動療法の一種。
(広義では、認知の変容を目的とする治療法全般を指す。)
認知療法は、これまでの条件づけやモデリングを基礎とした技法では治療困難とされていた、うつ病、人格障害、摂食障害などにも有効とされている。
ベックは、知覚や思考などの情報処理プロセスに潜む、個人の常識化したクセのようなものを認知の歪みと呼んだ。
そして、これが極端な場合にうつ病をはじめとした不適応的な症状が現れると考えた。
自動思考の更に深層にはスキーマと呼ばれるものがある。
自動思考とは、個人の意思によらず、瞬間的に表れる、考えやイメージのことである。
スキーマとは、幼少期から形成され続けてきた物事や経験に対する捉え方、認知の仕方の癖、経験によって身につけられた、自己や他者に対する基本的な態度や信念のことである。
認知療法の治療の具体的な流れを以下に示す。
① インテーク面接で、認知と感情の結びつきなどの心理教育を行う。
② クライエントに日々の活動記録をつけてもらい、セラピストとの話し合いを通して認知の歪みを特定する。
③ それらの妥当性や問題性をセラピストとクライエントが共同で検証することを通して、柔軟で、適切な認知・思考パターンを導き出す。
④ 導き出したパターンを実際の生活の中で実行してもらう。
そして、その有効性をクライエントに実感させ、日常的な認知や思考として機能できるように練習していくことで、適応的な行動の獲得や症状の除去へとつなげていく。
認知行動療法では、セラピストとクライエントの関係は、一緒に問題解決していく共同作業になることを意識してもらう。
ベックはこれを共同経験主義と呼んだ。
認知療法は現在の認知行動療法の考え方や技法の基盤にある治療法でありとても重要なものです。
「認知の歪み」や「自動思考」、「スキーマ」といった専門用語の理解は、治療を理解するにあたり必須となりますのでしっかりと覚えておきましょう。
関連する用語として行動療法と認知行動療法の全体的な理論について、下にリンクを出しておきますのでよろしかったらご覧ください。