「臨床心理学」における主要な治療技法のひとつである眼球運動による脱感作および再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)について解説します。
※当記事では以降より、EMDRと呼びます。
シャピロ,F.によって開発された認知行動療法。
古典的条件づけの原理である逆制止と、眼球運動の神経生理学的効果と考えられている記憶の再構成によるトラウマや不安、恐怖に関連した障害であるPTSDへ適用される心理療法である。
PTSDの治療に用いられる認知行動療法である。
EMDRの治療方法の詳細を以下に示す。
① まず、リラックス状態で安楽椅子などにクライエントを座らせて、同時にトラウマ体験を想起してもらう。
② 次に、セラピストがクライエントの眼前で、1分間に3~4往復の速さで、指を左右に振り、クライエントはその指の動きを目で追う。
③ これを20~30往復続けたら、数分間休憩し、再び同じように1時間程度繰り返す。
眼球運動による介入が特に知られているが、本来は、主観的障害単位に基づいて外傷体験の評価を行ったり、日誌法を用いて記入してもらう段階が先にある。そしてその後で、がんきゅ運動による介入を行うのが通例である。
リラックス状態での眼球運動は、REM睡眠と同じ神経生理学的状態を作り出す。これによって、眼球運動に伴う記憶の再構成という脳の認知的処理のメカニズムが働く。
その結果として、不安や恐怖とリラックスの逆制止の条件づけだけでなく、PTSDなどにみられる恐怖体験のフラッシュバックや健忘など、記憶に関連した解離症状が消えるという理論が背景にある。
PTSDの治療として非常に有名な技法です。
治療の概要はもちろんのこと、方法や根拠理論も説明できるように理解しておくことをおすすめします。
PTSDに対する理解も欠かせませんのでこの機会に一緒に抑えておいてください。