「発達心理学」における重要用語のひとつである内言と外言(inner speech and outer speech)について解説します。
■内言
→発話せず、思考の道具として自分自身の頭の中で用いられる言語行為のこと。また、自分自身への語りかけのこと。
■外言
→他者に向かって音声として働きかける言語行為のこと。
※内言は自分の考えを方向付けたり、行動を自己調整する思考の道具としての機能を持ち、外言は自分の意思を伝えるコミュニケーションの道具としての機能を持つ。
幼児期の子供の言語的特徴として、集団において他者とのコミュニケーションを意図しないで発する独り言である、自己中心的言語(集団的独語)がある。
これについて、ヴィゴツキーとピアジェは激しい論争を繰り広げた。
乳児は思考の道具としての言語も外言と区別せず用いており、本来発話する必要のない思考の道具まで発話してしまう。
ヴィゴツキーによれば、発達的に外言から内言へと移行していくとし、この外言を幼児の独語の正体とした。つまり幼少期の子供は黙って考えることが出来ずに、「音声を伴う内言」として現れ、これが自己中心言語であると考えた。
一方のピアジェは、前操作期の幼児の特徴である自己中心性(他者の視点を持つことが出来ないという認知発達論の理論)があるとして、幼児の発話が他者とのコミュニケーションという性質をもたない自己中心語と呼んだ。
【ピアジェ=ヴィゴツキー論争のまとめ】
①幼児の言語は他者とのコミュニケーションという性質を備えているか?
ピアジェ→備えていない。
ヴィゴツキー→備えている。
②乳児の独語の消滅はどのようい起こるのか?
ピアジェ→脱中心化により、他者への伝達を意識できるようになる。
ヴィゴツキー→内言の獲得により、思考の道具として使っている言語は発話しなくなる。
※最終的にこの論争は、ピアジェがある程度ヴィゴツキーの論に同意する形で終結している。
この理論は、乳児の言語を理解するうえで非常に重要な発達心理学の用語です。
内言と外言の意味を抑えておきましょう。
更に、ピアジェとの論争やその内容の理解を深めておくことをおすすめします。
また、関連記事としてピアジェの認知発達論の解説記事を貼っておきますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。