「臨床心理学」における重要な治療技法である遊戯療法(play therapy)について解説します。
言語能力が未熟な子供に対して、おもちゃや遊具を用い、遊びを介して行う心理療法である。
遊びを通じて内的な世界を表現することを目的としている。
遊戯療法はプレイセラピーと呼ばれる場合もある。
遊戯療法では、子供が、安全で自由に遊べる空間としてプレイルームを用意する。
標準的には週に1回、約50~60分程度で行われ、カウンセラーとの温かい関係の下、自由に遊ぶことによって、子供のありのままの自己を表現することが可能となる。
このような関係の下、ありのままの自己を表現することがカタルシス効果となって自己治癒力を発現させていく。
遊戯療法におけるセラピストの基本的な態度要件として、アクスラインはクライエント中心療法の考え方を活用して8つの原則を打ち立てた。(児童中心療法)
この原則は学派や理論的立場の違いを超えて、遊戯療法の基本原則であるとされている。
【アクスラインの8原則】
① 子供との間に良い治療関係(ラポール)を成立させる。
② 子供のあるがままを受容する。
③ 子供との関係の中で許容的雰囲気を創る。
④ 子供の気持ちを理解し、適切な情緒的反射を行う。
⑤ 子供に自信と責任を持たせる。
⑥ 非指示的態度を取り、子供がリードしセラピストは追従する。
⑦ 変化には長い時間がかかるため、子供のペースを大事にして進行を急がない。
⑧ 治療構造を守り、安全の確保や自己表現の促進といった必要な制限を与える。
精神分析の影響を受けた児童分析の方法論をめぐって、自我心理学派のフロイト,Aと対象関係論学派のクラインは激しい論争を行った。
・フロイト,A
→超自我が形成されていない幼児期の子供に、遊びを通した自己の表現は無意味であり、精神分析的解釈は不可能だとした。子供との現実的な関わりを重視し、親や教師への連携が重要だと考えた。
・クライン
→エディプス期以前でも超自我が形成されており、子供でも自分の不安や幻想を遊びを通して表現することが可能だと考えた。大人の自由連想法と同じように子供の遊びを解釈することによって、子供の自己洞察が深められるとした。
子供の問題は親の関わりが大きいため、親のカウンセリングを並行して行うことが通常である。子供とその親に面接する形態を指して親子並行面接と呼ぶ。
一般的には、同じ時間帯に別の面接者が別の部屋で行う。
2名の面接者の間の信頼関係が重要であり、2名が上手く、コミュニケーションを取ることによって、親と子供の双方からの抵抗や転移の処理を行うことが可能となる。
(経験の浅いセラピストが子供を、経験の多いセラピストが大人を担当するのが望ましいとされている。)
子供の臨床においてとても重要な治療法です。
精神分析的な理論やアクスラインの8原則など抑えておくべき箇所が多いです。ひとつひとつの理論や意味をしっかりと理解しておくことをおすすめします。