「精神医学」における主要な精神疾患のひとつである強迫性障害(obsessive compulsive disorder)について解説します。
目次
強迫関連障害に属する精神疾患で、強迫観念と強迫行為を繰り返すことによって日常生活が妨げられること。
(DSM-Ⅳまでは不安障害に分類されていたが、DSM-5より独立した。)
・強迫観念
⇒合理的ではない観念や思考へのとらわれのこと。除外できない不快なイメージ・考えのこと。
・強迫行為
⇒強迫観念に伴う不安を和らげるために行われる行動。一般的には馬鹿げていると思われるような行為。
本人は、強迫観念が非合理だとわかっているが、強迫行為をやめることが出来ず披露してしまうことが多い。
強迫観念・強迫行為の具体例をいくつか挙げる。
・外出時に家の鍵を閉めたにもかかわらず心配で何度も確認してしまう。
・手洗いをしっかりしたにもかかわらず何度も繰り返す。
・左右や上下の対称性にこだわり、必要がないものまで長い時間をかけ整理整頓する。
・強迫性障害のクライエントにはうつ病の併存が高く、有病率は約7割に上るといわれている。
・子供の場合は背景に自閉症スペクトラムがある場合もある。
・チック(突発的で不規則な身体の一部の癖のような動き)やトゥレット症候群(チックの内、多様性の運動チックと1つ以上の音声チックが幼少期に発症し慢性的に経過するもの)との合併も多い。
強迫性障害のアセスメント方法として、Y-BOCS(エール・ブラウン強迫観念・行為尺度)がある。
Y-BOCS(エール・ブラウン強迫観念・行為尺度)は、強迫性障害の重症度を査定するための質問紙検査であり40点満点である。
0~7点:正常
8~15点:軽度
16~23点:中等度
24~31点:重度
32点~40点:最重度
強迫観念→古典的条件づけによる条件反応。
強迫行為→不安や恐怖を回避しようとする回避行動。
⇒これらを解決するためにエクスポージャーや暴露反応妨害法などの行動療法で治療する。
親への攻撃性の置き換えや反動形成が原因。
また、発達的にみて肛門期への固着がある。
⇒強迫観念が抑圧された心的外傷であるとして精神分析的心理療法で治療する。
また、森田療法も有効である。
SSPI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に用いられ、時にうつ病の薬物治療の上限を超えた投与量を超えることもある。
自閉症スペクトラムなどが背景に考えられる場合はリスペリドンなどの抗精神病薬が有用である。
DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル:第5版)より不安障害から独立した精神疾患です。
主症状である強迫観念と強迫行為の内容と具体的な特徴を抑えておくことが重要です。
また、学習理論の解釈を由来とする行動療法と、精神分析の解釈を由来とする精神分析的心理療法の両者の視点を抑えておくこともポイントです。
関連するうつ病や自閉症スペクトラム、チックやトゥレット症候群などの疾患も併せて抑えておくことをおすすめします。