「発達心理学」における重要な用語のひとつである青年期(adolescence)と自我同一性(ego-identity)について解説いたします。
※自我同一性=アイデンティティは生涯発達心理学において非常に重要な理論ですので、ぜひ参考にして理解していただけると幸いです。
目次
青年期(adolescence)とは?
エリクソン,E.H.がライフサイクル論において特に重視した時期であり、12歳~22歳頃にあたる。
(近年の社会状況を考慮して、青年期=30歳頃までと考える説もあります。)
青年期の心理的発達
第二次性徴により肉体的に大人に接近することで、子どもではないと知らされると、親の価値観を盲目的に受け入れられなくなり、自我同一性(アイデンティティ)を確立しようとするようになる。
モラトリアム
エリクソンは、青年期の子どもには自己の探求のために本来大人が背負うべき義務や責任を免除されている期間があるとし、大人になることが猶予されている期間という意味でモラトリアムとよんだ。
青年期の発達課題と心理・社会的危機
エリクソンによる青年期の心理社会的発達課題は、アイデンティティの達成とアイデンティティの拡散である。
・アイデンティティの達成
→モラトリアムを経て「自分とは何者か?」「自分はどのように生きていくのか?」といった実存的な問いに対して、肯定的に確信をもって回答できる状態になること。
・アイデンティティの拡散
→これに失敗し、自分の実存的な存在価値を見出すことが出来ない状態になること。
自我同一性(ego-identity)とは?
エリクソン,E.H.による自我心理学の用語であり、ライフサイクル論における青年期の発達課題である。
=アイデンティティ
※自我が統合され自己意識が確立した状態を自我同一性の達成という。
自我同一性の基本的要素
エリクソンは、自我同一性の基本的要素として以下の3つの構成要素を挙げた。
① 連続性
→過去、現在、過去において、自分が一貫して同じ自分であるという感覚を持っていること。
② 同一性
→自分が他者とは代替不可能な固有な存在であるという感覚をもつこと。
③ 帰属性
→何らかの社会集団に所属して、その集団に受け入れられている感覚をもつこと。
この3つを構成要素とし、アイデンティティは主観的側面と社会的側面から構成されると考えた。
アイデンティティの拡散
アイデンティティの拡散とは
過去から現在にかけての自分自身という感覚が適切に統合されず、
果たすべき社会的役割や価値が見出せず、
周囲からの承認も得られない、
あるいは必要ないという心理状態のことをいう。
通常は、モラトリアムの適切な利用で克服し、適応的な心理状態が形成される。
境界例では、青年期において拡散状態が慢性化し、結果として不適応(同一性拡散障害)が見られる。
ポイント
自我同一性(アイデンティティ)は、愛着や認知発達に並び、発達心理学分野において頻出の用語です。
公認心理師国家資格、臨床心理士資格試験、または、心理学系大学院受験において基本中の基本になりますので、ぜひ理解しておいてください。
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