「やればできる!!」
根性論の一種として定着しているこの言葉を聞くと、根拠の薄い無責任な意味しか持たないような気もしてしまいますよね?
しかし、この考え方は、人生のあらゆる物事の方向性を大きく変えるような大きなパワーを持つ考え方であることが心理学の伝統的な研究により証明されました。
つまり、個人が持つ「マインドセット(心のあり方)」の種類で人生のあらゆる可能性が発揮されるか否かということが決まるということです。
そこで今回は、キャロル・ドゥエックさんという「マインドセット研究」の第一人者の研究をヒントに、科学的に実証されたやればできる精神の重要性と人生を変えるためのメンタルの作り方を紹介していきます。
目次
そもそもマインドセットとは何か?
マインドセットとは、あらゆる物事に対する考え方の基本的な枠組みのことです。
いわゆる、「心の持ちよう」「心の在り方」といったものになります。
このマインドセットというものは私たちの人生のありとあらゆるものに影響を与えます。
つまり、良いマインドセットは、良い人生を送るうえでとても重要な役割を果たします。
また、私たちが性格だと思っている内的なものの多くは、このマインドセットの産物であるという報告もあります。性格はなかなか変えられませんが、性格だと思っているものがマインドセットの範囲であるならば変えられる余地が十分にあります。
マインドセットは、価値観、思考、信念など、行動を形作る重要な過程を媒介して、成長や成功に大きな影響を与えるものです。
このように、マインドセットは人生の方向性を決定するとても重要なものなのです。
ではまず、良いマインドセットと悪いマインドセットとはどのようなものなのか?
2種類のマインドセットを紹介していきます。
良いマインドセット
良いマインドセットは人生のあらゆる側面においてポジティブな結果をもたらすものです。
良いマインドセット=しなやかマインドセット
のことを言います。「成長マインドセット」とも呼ばれているものです。
この「しなやかマインドセット」の根底にある信念は、人間の基本的資質は自分の努力次第で伸ばすことができるという考え方です。
つまり、人間が持って生まれた才能や気質、適正は様々なものがあるが、人生の結果はそのような遺伝的要素だけで決まるのではなく、自分の気持ちや行動次第でおおむねどうにでもなると考える基本的態度のことです。
「努力すれば達成できる」
「継続して取り組めば成長できる」
このような考え方が、しなやかマインドセットの例です。
★しなやかマインドセットの人が持つ特徴★
・才能は磨けば延びると信じているので、情熱をもって努力するエネルギーがある。
・現状では、出来ないことにも真剣に向き合って、それを出来るようにするためにはどのようなことが必要なのかを考えて行動することが出来る。
・今の自分の能力をストレートに受け入れ、欠点を隠そうとはせずにその欠点を克服するための方法を考える。
・人生に試練が訪れたとしても、粘り強く努力して、それを乗り越えようとする。
・成長にとらわれ新しいことに挑戦し続けるので安定した生産性を維持するため、長期的に見た時により良い結果を獲得する。
このように、しなやかマインドセットは、夢をかなえたり、目標を達成するために出会う易しくはない出来事や課題を乗り越えるエネルギーを作ってくれます。
そのため、夢をかなえるためには絶対に必要なものです。
悪いマインドセット
一方の悪いマインドセットは、現状を変えるきっかけをうむことはありません。つまり、夢や目標を追求しなければならない場面においては邪魔になるものです。
悪いマインドセット=硬直マインドセット
のことを言います。
この「硬直マインドセット」の根底にある信念は、人間の能力は生まれてから死ぬまで固定的なもので、大きくは変わらないという考え方です。
つまり、持って生まれた遺伝的要因が、その人生の結果や内容に大きく影響するため、自分が努力したとしても変わらないと考えるような態度のことです。
「どうせ、達成できるわけがない」
「何をやってもそこそこだ」
このような考え方が、硬直マインドセットの例です。
■硬直マインドセットの人が持つ特徴■
・努力ではどうにもならないと思っているから、本来満足するべきでない現状を無批判に受け入れる。
・自分の能力が変わらないと思っているから、今の自分が持っているわずかな能力を他人に必要以上に提示する。
・欠点を克服せずに、隠そうとして、有能さを見せつけようとする。
・新しいことにチャレンジしても意味がないと思っているので、可能性の幅が狭まる。
・継続した努力が出来ない。
このように、硬直マインドセットは、自分自身の目標から目を背けるだけでなく、能力が一定で変化しないという信念から、現状の自分を必要以上に有能に見せてしまうなど対人関係においてもネガティブに働いてしまうということがあります。
冷静に考えれば、スポーツや芸術、数学や物理学などの特殊な業界でない限り、成功のために必要な遺伝的要素はゼロとは言えませんが、それほど大きくはありません。それよりも安定した生産性のための継続した努力が必要です。もちろん、遺伝的要因が大切だといわれている特殊な業界であっても、それ以上に努力は大切だと成功者は言います。
人間のあらゆる結果は、遺伝と環境の相互関係によって決まりますが、その割合の正確な答えや、学問レベルの議論は専門家に任せるとして、私たちにできることは少なくとも、環境要因(努力)の大切さを過小評価せずに真剣に捉えることくらいですよね。
従って、少なくとも日常生活での実用レベルでは、硬直マインドセットは不利に働くことが多くなってしまいます。
失敗を成功に変えるのもマインドセット
人間が態度や信念を大きく変えるタイミングは「失敗」や「挫折」を経験した時です。
自分にとって価値が高い大きな挑戦をすると、どんな人であっても「失敗」や「挫折」にぶち当たることがあるかと思います。
多くの偉人が、成功のために必要なものとして失敗をあげています。
このことからも分かるように、失敗は成長や成功につきものなのです。
何かに挑戦したらその過程で必ずと言っていいほど高い確率で失敗にぶち当たります。
大切なことは失敗や挫折をどのように捉えるかなのです。
もし、しなやかマインドセットを持った人間なら
「この失敗をこれからの教訓にしよう」
「もっと工夫しよう」
「もっと努力しよう」
と思います。
しなやかマインドセットを持っていた偉人の代表例としてエジソンがあげられますが、彼は、電球の発明過程で数多くの失敗をしました。
しかし彼はその失敗を失敗として捉えることはせず、「私は失敗したことはない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ。」という名言を残しています。
他方で、硬直マインドセットを持った人が失敗や挫折に直面すると、
「やっぱり僕には能力がない」
「どうせ何をやってもうまくいかない」
「またチャレンジしたとしても永遠に失敗を繰り返すだけだ」
このように思ってしまうでしょう。
このように、マインドセットが硬直していると、失敗を成功のために通らなければならない1つの過程としてとらえることが出来ず、自分にはそれを乗り越えるための手立てを見つけることが出来ないと思い込んでしますのです。
失敗や挫折に対する意味づけが重要
繰り返しになりますが
どんな人でも、何かにチャレンジすれば失敗します。
もし何ににもチャレンジしていない状況でも、普通に生きているだけであらゆる社会的なしきたりや人間関係など、自分の力だけでは防ぎようのないことで挫折することだってあります。
そんな時に大切にしてほしい1つの価値観があります。
それは、その体験そのものにはその後の人生に大きな影響を与えるほどの力はないということです。
「受験に失敗した」「投資で損をした」「ビジネスで失敗した」「友達にいじめられた」「就活で落とされまくった」などなど、どんな経験でも同じです。
大切なことはその体験をどのように捉えるか、どのように今後の人生のために利用するのかを考えることです。
失敗や挫折は利用しなければ意味がありません。
マインドセットをしなやかに持っておくことで失敗や挫折ですら長期的に見た時、ポジティブな意味を持つものに変身します。
このように一見ネガティブに見えることを、ポジティブな意味になるように言い換えることを、心理学では「リフレーミング(肯定的意味づけ)」と言います。
先ほどあげたエジソンがまさにそうです。
彼は失敗を発見だと言い換えました。この言い換えが発明までの長い道のりを戦うためのエネルギーを作り、やがて大きな結果を生みだしたことは言うまでもありません。
もし、失敗をネガティブなまま捉え、固定化した価値観しか持てなかったらその後の成長は止まっていて大きな成功にはたどり着けなかったでしょう。
エジソンまではいかなくとも私たちの生活の中にはこのようなことが非常に多くあります。
失敗でつぶされてしまうのも、その体験からより一層大きな力をつけるのも、その人間が持つマインドセットに大きく依存していたことが実証されています。
「どうせ~」や「~のせいでできなかった」という考え方の癖は成功を遠ざけてしまいます。
「失敗は当たり前。この経験から工夫しよう。もっと努力しよう。」と思うことことが重要なのです。
これこそ、しなやかマインドセットです。
これが、大げさでもスピリチュアルでもなんでもなく、同じ失敗や挫折が意味を変え、やがて欲しかった結果を獲得するためにとても重要なものです。
目標を実現化する過程で直面する心のブレーキ
「○○大学に合格したい」「副業で月20万円稼ぎたい」「バンドで売れたい」「俳優になりたい」などなど・・・
生きていると、長期的に努力を継続しないと達成できないような目標を心の中に持つことがあるかと思います。
この時に大切なことが正に、しなやかマインドセット(やればできると思う信念)です。
しかし、しなやかマインドセットをもっている人であれ、目標を諦めてしまう時があります。
それは、「普通は~」という言葉を聞いた時です。
この考え方は、自分の中にあることもあれば、身近な他人が言ってくるときもあります。
自分がオリジナリティあふれる目標を掲げた場合、あるいは、今の能力からしたらちょっと難しいのではないかと思うような対象を狙った場合を考えてみてください。
その時、いろんな人が「普通はそんなことやらないでしょ」という視線を向けてくる場合もあれば、自分自身が「そんな高い目標を狙うのは消耗するうえに不確実極まりない」と思いこみブレーキをかけてしまう場合もあるかと思います。
つまり、「普通は」という一定の他者(時として自分)の勝手な常識によりメンタルブロックがほどけないことがよくあるということです。
日常生活をよく思い返してみると、完全な硬直マインドセットの持ち主でなくとも、目標達成のためにしなければならない行動にブレーキをかけてしまう時があるかと思います。
つまり何が言いたいかというと
「やればできる」という、しなやかマインドセットを本気で持たなければ何も変わらないということです。
言うまでもなく、人間の生き方は想像以上に多様ですし、そもそも「普通」という状態がどんな状態なのかを論理的に話すほうが難しいです。常識は場所や時間、人によって大きく変わるものです。
つまり、より大きな挑戦がしたいと思ったら、しなやかマインドセットを持ったうえで、徹底的に自己洗脳することが大切です。
そのためには、時として、自分の「しなやかマインドセット」を揺らがすような外部刺激をシャットアウトすることすら必要になります。
話がそれてしまったのでここらへんでまとめると、常識と思い込んでいるフワッとしたものは「しなやかマインドセット」を破壊する大敵になりうるという恐れがあるということになります。
やればできる!の本質
ここまで読んでいただいた方には、しなやかマインドセットの重要性が大体わかっていただけたかと思います。
当たり前すぎて無視されがちですが、「やればできる!」と思い込むことは想像以上に大切なことです。
とはいえ、「簡単にマインドセットは変わらないんじゃない?」「今まで何度も挑戦したけど同じような挫折を何回もしてしまったんだけど!」と八方ふさがりの方もいらっしゃるかと思います。
そんな方は、もう一度胸に手を当てて振り返ってみてください。
本気で「やればできる」と思ったのか?
目標達成は自転車のようなものです。最初はものすごく不安定ですし、力を入れてペダルをこいでもなかなかスピードは出ません。
しかし、やがて、安定してきます。力を入れなくてもそれなりに一定のスピードで走ります。
途中であきらめてしまっている人は悪いことではありませんが、自転車に乗るところでやめてしまっている状態です。スピードを出して安定させるまでには大きな力がいるためそれがつらくてそこで挫折してしまいます。
やればできる精神の本質は、出来るまでやめないということです。
小さく始めると長続きする
出来るまでやめないというと、ものすごく辛そうに聞こえます。
長くやらなければいけない時こそ、小さく始めることがとても重要です。
心理学にはスモールステップという言葉があります。
はじめは、到達が簡単なことから順序立てて小さく進んでいくという意味を持ちます。
この考え方や行動様式は、「しなやかマインドセット」を壊さないためにとても大切です。
結局、ひとつずつクリアしていく他に長期的な目標達成の方法はありません。
良いマインドセットを獲得するために必要なもの
そして、スモールステップをすると、小さい課題をクリアしたことによる成功体験により、「しなやかマインドセット」を維持するために必要な①自己肯定感や②自己効力感を高めることが出来ます。
この2つは「しなやかマインドセット」を本質的な意味で維持するためにとても重要です。
自己肯定感
自己肯定感とは、自分を認めるということです。
自分を認めることが継続的にできると、あらゆる物事にどんどんチャレンジしていこうという気持ちになれます。
車でいうとガソリンのような機能を果たしてくれます。
しなやかマインドセットを維持するための大きなエネルギーになります。
自己効力感
自己効力感とは、自分に対する有能感のことです。
自分は、課題をうまく遂行できる能力があるという感覚のことを言います。
実践的に使うことのできる実力を自分自身で認めるという心理プロセス、つまり、出来るという根拠のある自身と言い換えることもできます。
車でいうと、カーナビやハンドルのようなものです。つまり、目的地に正しくいくための戦略的に重要なパーツとして役割を果たすものになります。
しなやかマインドセットを維持するための根拠や自信になるものです。
まとめ
長くなったのでここまでの話をまとめます。
①人間には良いマインドセット(しなやかマインドセット)と悪いマインドセット(硬直マインドセット)の2種類のマインドセットがある。
②成功には失敗がつきものだが、失敗を乗り越えるためにはしなやかマインドセットの人が使うようなリフレーミングが必要で、失敗の意味をポジティブにすることがとても重要。
③しなやかマインドセットを持っていたとしても、「普通」という観念にとらわれると、簡単に硬直マインドセットに変わってしまい、目標が遠ざかって行ってしまう心の状態を作ってしまうので、徹底的に自己洗脳することが大切。
④目標達成は長期戦。しなやかマインドセットを長く保つにはスモールステップが大切。
ということになります。
最期まで読んでいただきありがとうございました。