「発達心理学」における重要な用語のひとつである視覚的選好法・選好注視法(preferential looking method)について解説いたします。
視覚的選好法・選好注視法(preferential looking method)とは?
ファンツ,R.S.が開発・報告した実験のこと。
乳児に2つ以上の刺激を提示し、注視時間の違いから提示されている複数の刺激を別のものと認識しているかを確認する方法。
※視覚的選好法と選好注視法は同義
実験内容と結果
内容
実験の目的は、乳児の視覚的弁別能力や興味の方向性を探ることである。
方法は、十字の眼前に2枚の刺激図番を提示し、どちらの図版をより長く注視するのかを記録する。
結果
生後5日以内の新生児は、文字や弓矢のような図版よりも、人間の顔が描かれた図版を注視する時間が長いことが観察された。
つまり、乳児は漠然と外観を知覚しているのではなく、人間の顔を他のものと弁別し選択的に反応していることが示されたのである。
更に、人の顔のみならず、簡便な図形と複雑な図形では、新生児であっても複雑なパターンの刺激を長く注視した。
(ちなみに、年齢を重ねるごとに複雑な図形をみる割合は高まった。)
対人認知の発達
選好注視法において、乳児は特に人の顔のパターンの刺激をより長く注視する傾向が見られた。
これは、乳児が養育者などを選好するという生得的な性質があると考えることが出来る結果である。
ちなみに、乳幼児は自分で行動や意思を決定することが難しいため、養育者の表情や反応、行動を手掛かりにして、未知の者への態度を決定する。なお、これを社会的参照と呼ぶ。
ポイント
視覚的選好法は、言葉による報告が不可能で、眼球運動の測定も難しい乳児の、視覚的弁別能力や興味の方向性を探った意義のある研究です。
この研究によって、乳児であっても人間の顔を選好するということが分かりました。
人間に元々備え付けられた能力のすごさを感じる研究ですね。
赤ちゃん研究は、学習や社会化によって備え付けられる能力以前の人間の本質を探る手掛かりにもなります。
それゆえ、どこまでも興味深い人間のメカニズムを調べるために有効とされています。
ぜひ参考にしてみてください。