「精神医学」における主要な精神疾患のひとつである適応障害(adjustment disorder)について解説します。
適応障害(adjustment disorder)とは?
はっきりと認識できるストレス因子によって生じる著しい苦痛や機能の障害が生じ、日常生活や社会生活において困難が生じる精神疾患である。
しかし、ストレス因子が除外されれば症状が消失する特徴をもつ。
DSM-Ⅳでは適応障害として独立していたが、DSM-5ではストレス関連障害群に含められた。
※ストレス関連障害群には、ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)が含まれている。
適応障害の症状
症状としては、不安・焦燥感・抑うつなどの心理的障害と、社会面・職業面での機能障害が生じる。
ストレス状態に反応して3カ月以内に症状が生じる。
診断
診断は、心理的な障害と機能障害のどちらかあるいは両方が必要である。
また、うつ病などの他の精神疾患の診断基準を満たしていない、あるいは元から有する精神疾患の悪化ではない場合に適応障害と診断される。
(仮に、うつ病の診断基準を満たしている場合はうつ病という診断名が優先される。)
鑑別疾病として、うつ病・ASD(急性ストレス障害)・PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがある。
※うつ病との鑑別が難しいとされている。ひとつの特徴として、うつ病は問題解決しても治らないが、適応障害はストレスが取り除かれれば治るというものがある。
治療
一般に時間経過とともに、ストレス因がなくなるか軽減され治癒すると考えられている。しかし、現実的に変えようがないストレス因である場合には、それに対する考え方や対応の仕方を適応的に修正していくことを目指す必要もある。
従って休養や環境調整を中心にストレス因が除去されるのを待つこともあれば、認知行動療法を用い、ストレスへの抵抗性や対処能力を高めることを目指すこともある。状況を正しく判断し有効な治療法を選択する必要がある。
ポイント
DSM-5からは、ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)と同じ、ストレス関連障害に含められるようになった点は特に抑えておきたいポイントです。
また、症状としてうつ病との鑑別が難しいという特徴がありますが、基本的にはストレス因の除去により症状が治るか否か、うつ病の診断基準を満たすか否かで診断される点も覚えておくことをおすすめします。
もう一度、うつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の詳細を確認しておくことをおすすめします。