「学習心理学」の根底をなす心理学の立場・考え方である行動主義(behaviorism)について解説いたします。
行動主義(behaviorism)とは?
ジョン・ワトソンによって1912年に「行動主義の立場から見た心理学」という題目の公演を行い、1913年に心理学評論誌に発表された。
実体のない意識や無意識ではなく、外部から観察可能な「行動」を分析して客観性を確保すると考える心理学の立場である。
なお、ワトソンの行動主義は、そののちに台頭する新しい行動主義と比較するために古典的行動主義と呼ばれることもある。
※意識なき心理学と評されることもある。
内容
フロイトの精神分析学が大人気となっていた20世紀前半、行動主義はほぼ同時期に浸透し始めた。
【行動主義の考え方・内容】
心理学が科学であるためには、客観的に観察可能なものでなければならない。
従って、意識を内観する従来の方法は間違いであり、刺激と反応の関係を明らかにすることによって、行動を予知し統制することのできる法則・原理を見出す必要がある。
S-R理論
ワトソンは、内観法を捨て、刺激(Stimulus)と反応(Response)の関係に注目したS-R理論により、行動の予測と制御が可能であると述べた。
ワトソンは、人間の反応を生起させる環境条件が確認されていれば、習慣のコントロールをすることが可能になるという知見から、人間の本能的な行動は極めて限られたものとして扱い、成熟することで人間のすべての行動を抑制できるという大胆な考え方を主張した。
【ワトソンの言葉】
もし私に生後間もない10人の健康な子供を預けてくれたら、その子供たちを望み通りの性格にし、かつ、望み通りの職業に就かせてあげよう。
※このようにワトソンは、遺伝要因を完全に酒、極端な環境主義を徹底した。
アルバート坊やの実験
ワトソンは、パブロフの条件付けの原理を学習過程の中心に位置づけ1920年にアルバート坊やの実験を公表した。
【実験内容の要点】
生後11カ月のアルバートが白ねずみを触ろうとした時、大きな音(恐怖を感じる音)を鳴らすことを続けると、最初は白ねずみを怖がっていなかったアルバートだったが、やがて白ねずみを怖がるようになった。
やがて、白ねずみだけではなく、白くふわふわしたもの全般を怖がるようになった。(古典的条件付けの般化の原理)。
ダブラ・ラサ
心理学の源流として行動主義に関連する、代表的な哲学的思想であるダブラ・ラサ(Tabula rasa)を紹介する。
ダブラ・ラサとは、イギリスのロックが提唱したものであり、「心は白紙の状態から始まり、経験を通して獲得される(経験説)」と考えるものである。
これは、デカルトの、心は生得的なものであり(生得説)、別の存在である身体(心身二元論)と相互的に働くという考え方と対立した。
ポイント
ワトソンの極端な環境主義的な考え方(人間の行動、情動、パーソナリティのほとんどが環境要因に影響を受ける)は、特にアメリカの心理学界に大きな影響を与えました。
現在では、まともな心理学者であれば環境と生得的な素因は相互に影響し合い、どちらかがすべてを決定するわけではないと考えるのが普通です。
しかし行動主義は、多くの学習理論の根底にある考え方であると言え、非常に重要な心理学の立場です。
ワトソンの発言や、アルバート坊やの実験の内容はぜひチェックしてみてください。
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