「発達心理学」における重要な用語のひとつである臨界期(critical period)について解説いたします。
臨界期(critical period)とは?
発達に大きな影響を及ぼす出生直後の経験を初期経験と呼び、初期経験が成立する出生直後のわずかな時期のことをいう。
すなわち、出生から初期経験までを指して臨界期と呼ぶ。
※この理論は、初期学習の重要性を提示する大きなエビデンスである。
有名な研究にローレンツの刻印づけ(刷り込み)の研究がある。
(エソロジーにおける概念である。)
刻印づけの研究
ローレンツによる研究では、カモやアヒルなどの離巣性の鳥類が孵化した直後に、初めて会った対象に接近したり後追い行動を示すことが明らかになった。
しかし、観察を続けるとこの行動は孵化直後36時間前後しか生起しない。
(臨界期は孵化直後の36時間前後となる。)
通常、学習が成立するためにはある程度の知能が必要であり、ものを覚えるのは後天的な経験によるためであると考えられていた。
しかし、この刻印づけでは一瞬で学習が成立した点で、従来の考えと大きく異なる。
すなわち刷り込みには部分的に先天的な要素が入っていることのひとつの示唆を示した。
おまけ
刻印づけなどの初期経験で成立した学習は、可逆性が低く(もとに戻りづらく)修正が困難であるため、臨界期の学習は極めて重要であるといえる。
とりわけ、人間は可逆性が高く、修正の可能性も比較的高いため、臨界期とは呼ばずに敏感気と呼ぶ。
例えば、言語獲得などが人間の例として挙げられる。初期に学習した言語は定着しやすい。
ポイント
心理学では長年、議論の中核となっている生得説と経験説、つまり遺伝か環境か問題ですが、刻印づけの研究では、部分的に生得的な能力を持ち合わせて学習がなされることを示しています。
臨界期の概念は非常に重要なものですのでぜひ理解してみてください。